(ヘンリク・スベンスマルク:デンマーク工科大学 国立宇宙研究所 上級研究員)
2021年8月9日に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新報告書(第6次評価報告書・自然科学的根拠)が発表されました。
この報告書は、国際社会が温室効果ガスの排出を止めなければ、差し迫った災害が発生するという暗い予測を含んだ、一連の気候変動報告書の最新版です。小氷期(14世紀~19世紀半ば)の終わり以降の温暖化の全体が、化石燃料の燃焼による人間のCO2排出によるものと結論づけている点で異例なものです。
前回の報告書では、人為的な温室効果ガスの排出が支配的になったのは1950年以降とされていましたが、今回の第6次報告書では、人為的な影響が大きくなっています。つまり、これまで自然変動とされていた1950年以前の気候変動も、人為的なものとされたのです。
「太陽は気候変動に関与しない」というIPCCの前提
しかし、IPCCが注目する18世紀半ばから現在までの期間で、自然の気候変動が実質的な意味を持たず、一定だったと仮定するのは奇妙なことです。産業革命期以前の気候が一定であるというのは、マイケル・マンが作成した、今では悪名高い「ホッケースティック」と呼ばれる、過去1000年間の気温を復元したグラフが示したことでした。2001年のIPCC第3次報告書では、20世紀に産業社会が本格化するまでは気温はほぼ一定で、その後、急上昇したことを示す証拠として、この「ホッケースティック状」の気温グラフが多用されました。その後、マッキンタイアとマッキトリックが、「ホッケースティック」の作成方法やデータに疑わしい点があることを示し、多くの論争を巻き起こしました。最新の第6次報告書では、「政策決定者向けサマリー」の中で自然による気候変動がほぼ一定であることを示唆するものとして、再び「ホッケースティック状」の気温グラフが登場しています。