(Pixabay)

「脱炭素」や「ESG・SDGs」への関心が高まる中、これらとITやデジタル化がオーバーラップする有望分野の1つが、脱炭素化を巡る市場メカニズムの導入である。デジタル技術でどんな市場メカニズムを構築し得るのか。元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第35回。

 映画「スターウォーズ」シリーズでは、ハン・ソロのジャバ・ザ・ハットへの借金といった話は断片的には出てきますが、「おかね」のやりとりはほとんど出てきません。そもそも別々の惑星が同じ中央銀行を共有するとは考えにくいですし、金やダイヤモンドも、惑星によっては余るほど採れるので大して価値がないのかもしれません。ファルコン号やデス・スターの建造にかかった費用は、一体どのように支払われたのでしょうか。

 この点、2018年に公開された同シリーズのスピンアウト作品 “Solo” (邦題「ハン・ソロ」)では、「コアクシウム」という強力なエネルギー源が、宇宙共通の通貨代わりに使われているらしい描写があります。エネルギーの重要性は、同じ物理法則の下で生きている限り、おそらく宇宙共通でしょうから、確かに惑星間の取引ではおかねの代わりにもなりそうです。

エネルギー大量消費社会としての近代

 地球経済が急速な成長を始めたのは、近代、イギリスで産業革命が起こって以降のことであり、それまで、世界経済はほとんど成長していなかったと考えられています。そして、近代以降の経済成長の大きな原動力となったのが、エネルギーの大量消費でした。

世界の一人当たりGDP(1990年時点の米ドル換算)