「化石燃料」と呼ばれる石炭や石油は、はるか太古の昔から存在していた生物(シアノバクテリアなど)が長年にわたり太陽のエネルギーを炭素化合物の形で溜め込んだものと、一般的には考えられています。ジェームス・ワットの蒸気機関の発明がとりわけ画期的であったのは、地球が何十億年もかけて蓄積してきたエネルギーを、人類がほんの数百年で一気に使ってしまえるような、エネルギーの大量消費による経済成長を実現させたことでしょう。
もっとも、このようなエネルギーの大量消費に支えられた経済成長は、現在、再考を迫られています。化石燃料から普通のやり方でエネルギーを取り出そうとすれば、二酸化炭素を発生させ、地球温暖化につながってしまうということで、世界の議論は、その排出を制限する方向に動いているからです。そうなると、化石燃料をそもそも使わないか、二酸化炭素を出さない方法でエネルギーを取り出すか、あるいは、二酸化炭素を出した分、どこかで吸収するほかはありません。
脱炭素化と市場メカニズム
そして、地球全体の脱炭素化の鍵を握るのが、市場メカニズムの活用です。
温暖化問題に直接関心を持つ人々だけがいくら二酸化炭素を出さないよう努めても、それ以外の人々が二酸化炭素を出し続けていては、地球環境全体への効果は限定的になります。一方、二酸化炭素を多く発生させながら生産される製品ほど、その分、価格を高くできれば、誰もがそうした製品の購入に慎重になるでしょう。
また、「脱炭素化を推し進めた方が経済的にも得」といったインセンティブをつくり出すことは、環境問題への対応を持続的なものにする上で重要となります。献身的なボランティアに頼る活動は、長続きしにくいからです。
さらに、それぞれの主体が予め定められた量の二酸化炭素だけを削減しようとするのではなく、それぞれが可能な限りの削減に取り組んだ方が、全体としての効果が大きくなります。このような仕組みを構築する上でも、市場メカニズムは重要です。