このことは人為的な気候変動とどのような関係があるのでしょう。

 20世紀に太陽活動が活発になったのは、CO2の増加と同時期です。そのため、気温上昇の一部は太陽が担っていると考えられます。つまり、温室効果ガスによる気温上昇の割合はもっと小さかったはずです。そのため、CO2に対する気候感度は、IPCCが危惧する「CO2濃度が2倍になれば、気温は2~4℃上がる」という値よりも低くなります。IPCCのいう2~4℃のうち、CO2の温室効果に直接起因するのは約1.3℃だけであることに注意する必要があります。残りの気温上昇は、想定される雲量の減少に由来する、ということになります。

 雲が気候システムの中で最も不確実な要素の1つであることは誰もが認めるところですが、私たちの研究では、20世紀に観測された気温上昇の一部は、太陽による雲への影響だと考えています。そのため、CO2への気候感度は気候モデルが現在示しているものより小さい値になる可能性があります。CO2への気候感度が低いということは、将来予測される気候変動の規模がスケールダウンすることを意味します。

誤って用いられているIPCCの報告書

 皮肉なことに、このような結果になる可能性があるからこそ、この研究は執拗に攻撃されているのです。しかし、太陽が気候に与える影響を正確に知ることは、誰にとっても有益なはずです。

 とはいえ、資金が集まらない研究が実施されることはありません。上述の太陽と気候の研究のための助成金を得ることは非常に困難でした。この件はIPCCの報告書に付随する「別の問題」を投げかけています。IPCCの報告書は本来、政治的な意思決定を導くためのものですが、気候科学に人為的なコンセンサスを押し付け、科学の善し悪しを判断するために誤って用いられているのです。

 気候変動に関する予測はいまや全世界を席巻しており、巨額の投資が行われると言われています。であればなおさら、我々は気候変動の問題をより深く理解しなければならないはずです。