衆議院厚生労働委員会で質問する立憲民主党の枝野幸男代表(2021年7月7日、写真:つのだよしお/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 政治家が出す本で面白い思えるものは少ない。ほぼ自画自賛になるからだ。しかも、現役政治家であるがゆえに、言いたくても言えないこともある。

 私も参院議員だったが、政治家時代には1冊の本も出していない。秘書時代や候補者時代、政治家を辞めてからは十数冊の本を出している。政治家時代には、需要がなかったということもあるが、やはり責任の大きさが違うということもある。

 政治家の本をそれほど読んだわけではないが、読んでみて「なるほど」とうなった本がある。1993年5月に出版された小沢一郎氏の『日本改造計画』(講談社)である。内容への賛否はともかく、非常に刺激的であったことは間違いない。発行年だけでも72万5000部という大ベストセラーになった。

 米国アリゾナ州北部のグランド・キャニオンに行ったところから文章は始まる。深さ1200メートルの大渓谷があり、そこは国立公園の観光地で、多くの人々が訪れるにもかかわらず、転落を防ぐ柵がなかったことに小沢氏は驚く。これが日本ならどうか。日本で同じような観光地で事故が起これば、観光地の管理責任者は轟轟(ごうごう)たる非難を浴びることになると指摘した小沢氏は次のように述べる。