この時点ではテニス界を筆頭に世界の大半が大坂の行動に批判的だった。テニス界で記録保持者や金字塔を打ち立てたレジェンドたちも、すべての大会参加選手に義務付けられている会見を拒否することに強い怒りを示し、その中には「永久追放」まで提言する声があったほど。実際、各国の主要メディアで報道された中において世界最速サーブ(時速263キロ)のギネス記録を持つ元デビスカップオーストラリア代表のサミュエル・グロス氏や現役時代に全仏オープン3度を含む4大大会で7度の優勝を誇るマッツ・ビランデル氏、男子の世界ランキング3位ラファエル・ナダル、女子の元世界ランキング1位ガルビネ・ムグルサらそうそうたる面々が「あのような行為に共感を覚える人はほとんどいない」「彼女の発表は一方的な見当違いで偽善」などと大坂に不快感を表すコメントを出していた。
ところが、大坂がうつ病を告白すると風向きがガラリと変わった。
大坂のうつ告白で空気一変
あれほど舌鋒鋭く他の4大大会出場停止の可能性までチラつかせていたはずの全仏主催者・フランステニス連盟のジル・モレットン会長は「大坂選手の棄権は残念で悲しい。また来年の大会に彼女が戻ってきてくれることを願う」と“渋々”の発言。ここまで大坂の会見拒否に厳しい対応を見せていた4大大会主催者には欧米メディアやファンから猛バッシングの“ブーメラン”が跳ね返ってきており、思わぬ流れに大慌てとなっているようだ。
もちろん女子テニス界レジェンドのセリーヌ・ウイリアムズのように心からの本心で「かわいそう。私も彼女(大坂)がどういう気持ちか分かる。ハグをしてあげたい」などと同情的な言葉を寄せる選手も中にはいる。
とはいえ、大半のテニス界の大物、関係者たちはそれまで明らかに会見拒否をブッ叩いておきながら大坂自身によるうつ状態の告白後、振り上げていた拳を下げざるを得なくってしまい、ダンマリを決め込むか、あるいはシレっと擁護する側に回っているのが現状のようだ。
特に大坂の母国である、ここ日本ではもともとテニスに対してまず興味を持っていなさそうな芸能人がSNSや自身の出演したワイドショー番組などで「大坂さんは何も間違っていなかった」「むしろ大坂さんの勇気ある行動と公表は称賛されるべき」などとオピニオンとして大々的に取り上げられるという“滑稽な現象”まで起こっている。