連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識
神仏の世界で欲望の最高位の神、他化自在天(たけじざいてん)は他人の快楽を自分自身の快楽とし、男女の互いの欲念で淫事を満足することで、膝の上に子供を産むことから他化自在と称する。
私たち男性は1日に幾度となく色情を抱いて女性を眺めるが、人間は男女の抱擁と合一によってしか、子供を産むことができない。
その不完全性こそが、神仏ではなく人間の特性といえよう。
男性は女性の裸を目にすれば、平静な気持ちを保つことは難しく、意思に関わりなく性的スイッチが入ると欲望が刺激される。それが人間の特性のようだ。
また、男性は女性が裸体でなくとも同じことが生じるようだ。
例えば、ボタンが2つほど開いたブラウスを着た女性が、何らかの都合で前屈みになったりして、その胸元部分に露出が生じる時、間髪入れず視線がそこに走り、思わず吸い込まれるように見入ってしまうことは、男性がよくやりがちな行為である。
たとえブラジャーが乳房を包んでいて、お目当てのものが見えないことが分かっていても、つい目が離せなくなる。見たいという誘惑に耐えるのは実に難しい。
だが、女性に対し色情を抱くのは、何も人間ばかりではない。雲の上に住む仙人さえその魅力に引き寄せられるという。
『今昔物語』によれば、大和国吉野郡の龍門寺で修行を積んでいた神通力を得た久米という仙人がいた。
ある日、空中を飛行中、ふと下界を見下ろしたところ、脹脛(ふくらはぎ)もあらわに着物の裾を端折って洗濯をしている1人の若い娘が目に留まった。