中国が打ち上げに成功した大型ロケット「長征5号B」(5月5日撮影、写真:新華社/アフロ)

 米国防省は5月5日、中国の大型ロケット「長征5号B」(中国では「長征五号B遥二」と呼ばれている)が制御不能状態で、今週末にも大気圏に再突入するとみられ、人が住む場所に落下する恐れがあると発表した。

 この「長征5号B」は4月29日、海南島の文昌衛星発射場から打ち上げられたばかりで、中国の宇宙ステーション「天宮」の中核モジュールである「天和」を宇宙に運んだ。

 打ち上げは成功し、「天和」は予定軌道に入り、発射から約1時間後には天和の太陽光パネルの展開にも成功している。

「天和」打ち上げに続いて、5月には宇宙ステーションへの物資補給、6月には有人宇宙飛行ミッションが行われる予定になっている。

 宇宙ステーション「天宮」は2022年末までに完成し、10年間から15年間の運用が予定されている。

 中国の威信をかけた宇宙ステーション「天宮」の建設が始まったが、大型ロケットが打ち上げ早々にどこに落ちるか分からない物騒な状況になるのはどうしてか。

 その背景には国際ルールを無視して、米国を凌駕する宇宙強国を目指す中国の野望と無責任体質がある。

 以下、中国の宇宙開発と今回のロケット落下問題について軍事的な意味合いを加味しながら説明する。

米国を凌駕する宇宙強国を目指す中国

 毛沢東は1950年代、「両弾一星」プロジェクトに着手した。両弾とは原子爆弾と大陸間弾道ミサイルのことであり、一星とは人工衛星を意味する。

 宇宙空間は今や、現代戦において最も重要なドメイン(戦う領域)の一つであり、大国が制宙権(宇宙の支配権)を確保しようとして争う舞台となっている。

 中国は、宇宙で米国を駆逐するという野心的な計画の一環として、米国とその同盟国の衛星を標的とする一連の攻撃能力を備えた兵器の開発・配備を進めている。

 米国家情報長官室(Office of the Director of National Intelligence)が4月13日に発表した報告書「グローバル・リスク評価(Global Risk Assessment)」は、中国を米国の技術競争力に対する「最大の脅威」だと結論付けている。