3月8日、参議院予算委員会での菅義偉首相(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 東日本大震災から10年が経った。震災からの復興はまだ十分ではない。そのような中で、日本、そして世界は新型コロナウイルスに襲われている。幸いなことにワクチンの開発が順調に進み、世界中で接種が始まった。しかし、変異株の発生など、ウイルスを抑制するところまでは行っていない。パンデミック宣言から丁度1年が経過したが、終結宣言を出すまでにあとどれくらいの月日が必要かは見当がつかない。

 首都圏に出されていた緊急事態宣言は2週間再延長されたが、その後も感染は下げ止まりしており、21日に解除できるかどうかは不明である。大震災のときに、福島第一原発が事故を起こし、それもまた多くの人の日常生活を奪う原因となった。しかし、日本の今後のエネルギー政策をどうするかは、まだ定まっていない。

 問題が山積する中で、今は日本全体がコロナ対策で精一杯の状況であり、しかも東京五輪を控えて、その準備にも通常以上の神経を使わねばならなくなっている。10年前の大震災の際の教訓が十分に活かされているとは思えない状況なのである。

「最悪の事態」を想定しない日本の危機対応マニュアル

 津波で子どもたちなど84人が犠牲になった石巻市の大川小学校を訪れたことがある。友人の彫刻家が鎮魂のために母子像を製作したので、それを一緒に届けるためである。校庭の裏山に逃げていれば助かったのだが、北上川の方向に生徒は移動させられ、川を逆流してきた津波に飲まれてしまった。

 現場を見て、なぜ先生は子どもたちを裏山に引率しなかったのかと不思議に思った。指導者の決断が生死を決めたのだが、津波到来を想定した避難マニュアルは準備されておらず、裏山に逃げるシナリオは書かれていなかったという。

 危機管理とは、最悪の事態を想定して準備することであったが、それを怠っていた。また、リーダーの指示がいかに重要かである。適切な指示によって、命が助かった例も多数報告されている。