神戸にはお洒落な都会というイメージがあった。車を飛ばしながら、かつて訪れた美しい神戸の街並みを思い出していた。
灯りの消えた街、サーチライトに照らされながらの救出活動
阪神地区に入ったのはもう日付が変わった未明だった。
神戸の隣の西宮市内に入ってすぐ、突然、左手にサーチライトの光が見えた。近づくとサーチライトに照らされていたのが一軒の民家だった。消防のレスキュー隊がいた。一人の高齢女性が運び出されてきた。すでに息が絶えているのが見てとれた。自分の体を何かから守るかのように両手が上に伸ばされていた。折れた柱、落ちて来きた梁から咄嗟に身を庇ったのだろうか・・・。民家は大きく傾き、屋根は地面のすぐ近くまで落ちていた。
サーチライトの光の中からは周りが何も見えない。向こうはただ真っ暗な闇で、現実から遠く離れてしまったように感じる。この不気味で静かな闇の向こうに地震の凄まじい傷跡が続いているのだろうか。
灯りの消えた暗い夜道を神戸市長田区へ向かった。長田区では大規模な火災が発生していた。
長田区に近づくにつれ、車のライトの先に煙が漂ってきた。火災の跡の燻った臭いも立ちこめている。車を降りて近づいてみると、まだあちこちに残り火のような赤い炎が見えた。日中、懸命の消火や救助が続けられたのであろうこの場所も、今はひっそりと闇の中だ。こうしている今も、この神戸のどこかでは救助活動が続けられているのだろう。灯りの消えた街では右も左もわからないが、じっと眠れずに朝を待つ人々も多いのだろう。
夜が明け、辺りが薄明るくなってくると、目の前に凄絶な光景が現れた。爆撃の跡のように焼け落ちた商店街のアーケード(冒頭の写真)、焼け爛れて鉄屑のようになった車、倒れた電柱、グシャグシャに絡んだ電線。この破壊されつくした街の光景が平和な日本の光景だとは・・・。これまで見てきたソマリアやボスニアの戦場と変わらない。