(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
クルマ関係者との会話が噛み合わない
JBpressに前回、「世界的にクルマ減産へ、車載半導体不足の本当の原因」(2021年2月3日)という記事を寄稿した。その後、クルマ関係者と話をする機会があったが、どうも会話が噛み合わない。
それはなぜかを考えてみたが、クルマ関係者の多くが、半導体がどのようにつくられているか、どのくらいのリードタイムが必要か、ルネサスが生産委託しているファンドリーの台湾TSMCの生産キャパシティがどれだけ逼迫しているか、などが理解できていないことに原因がありそうだ。
そこで、本稿では、まず、半導体がどのような工程とリードタイムでつくられているかを説明する。次に、ルネサスをはじめとする車載半導体メーカーがTSMCに生産委託している現状とTSMCの生産キャパシテイの逼迫度合いを説明する。その上で、TSMCの月産8万枚の仮想車載半導体ファブを想定することによって、なぜ、車載半導体が不足するかをシミュレーションしてみる。
最後に、ルネサスは2月10日の決算報告会で、英ダイアログ・セミコンダクター(Dialog Semiconductor)を約6157億円で買収し、加えて2021年第1四半期に、これまでの約3倍の150億円を設備投資して車載半導体を増産することを発表したが、いずれもうまくいかないであろう推論を述べる。
世界的に半導体が足りない
2019年時点で、車載半導体の世界シェアトップ5は、1位がドイツのインフィニオン(13.4%)、2位がオランダNXPセミコンダクターズ(11.3%)、3位がルネサス(8.7%)、4位が米テキサスインスツルメンツ(8.1%)、5位が欧州STマイクロエレクトロニクス(7.6%)となっている(図1)。
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