病院で死ぬということがいかに当たり前で、それ以外の選択がどんなに難しいことなのか。例え、在宅治療を選んだとしても、険しい道のりがあると知る。在宅医と訪問看護師と家族の連携がどんなに重要か。
緊急の時、人は自分の頭で考えることができず、つい「お医者さんが言うことは絶対」と思ってしまう。果たして、命を懸けられるほど、信頼できる人なのか。いざという時、病院や医師側のペースに飲み込まれてしまわぬよう、普段から知識を備えておかねばならない。
生きるとは食べること、自立排泄は生きるための尊厳
患者の死に落ち込んだ河田はベテラン在宅医の長野(奥田瑛二)に相談。その言動にショックを受ける。
「ステージ4だから終末期とは限らない。いまやそこから生還する者もいる。あらゆる可能性を諦めちゃダメだ」
「病院からの情報は疑ってかかれ。カルテじゃなくて本人を診ろ」
さらに「心臓や呼吸が止まっても、脳は生きている」と亡くなった後も患者に愛情をかける、独特な長野ならではのやり方。
河田同様、私も「えっ?」と思ったのは「生きるとは食べること」と胃ろうを造設された患者に「食べさせちゃおうか」と食事させる場面だ。
点滴だけで生かされ、どれだけの患者が生きる気力をなくしていくだろう。肺炎で入院した母を思い出す。お見舞いに行っても、いつも医師には会えず、「いつ食事に変えてもらえますか」の一言が聞けなかった。料理が得意で、食べることが大好きだった母はみるみるうちに衰弱し、帰らぬ人となった。