まるごと高専で育成する人材像とは
寺田:スケジュール的にはかなりタイトです。現状、われわれには教職員の募集と資金集めという2つの課題があります。
教職員については、いい先生に本気で取り組んでもらわなければいい学校にはなりません。高専では20人の教職員を募集しており、実際の着任は5年間にわたって徐々に進むと思いますが、今年10月の申請の際には着任予定の20人を書面上揃える必要があります。どうにかしますが、これはなかなかのハードルです。
もう一つの資金集めも簡単ではありません。学校の設置にあたっては、校舎の建設費や図書館の書籍など開校時にイニシャルコストとしてかかるものと、毎年の運営にかかるランニングコストの2つがあります。
イニシャルコストは15億円を見ており、私が5億円を出しますが、残りは寄付で集めます。ランニングコストの方も、授業料だけでコストをまかなおうとすると授業料が高くなってしまいますので、奨学金を充実させるためにも、こちらも寄付が必要です。個人版と企業版のふるさと納税などを活用するつもりです。
──学校設立の取り組みに共感する人もたくさんいるのでは?
寺田:Sansanで何度も資金調達をしましたが、なかなか難しいですよ。会社の資金調達と違って、経済的なリターンをプレゼンできるわけではないので。でも、資金調達も理事長の大切な仕事です。ダイバーシティを進めるためにも、さまざまな学生に来て欲しいので、しっかりと資金を集めます。
──どういう人材を育てたいと思っていますか?
寺田:第一に、起業家精神のある人材です。僕は親が起業家だったため、起業という選択肢が自分の環境の中にありました。そもそも「教えるべきものか」という議論は別にありますが、これまで教育の内側で起業家精神が教育のテーマに上がったことはないと思います。ただ、今の時代は起業のハードルも下がりつつあります。「大学に進学する」「就職する」というのと同じぐらい「起業する」という選択肢が当たり前だと言うことを伝えていきたい。
では、どうやって起業するのかということを考えた時に、今はまともなカリキュラムがありません。起業家精神を持つ人材が戦うために必要な刀。それが何かといえば、私はテクノロジーとデザインだと思う。この2つの刀を言語として使えれば、自分の思いを形にしていくことができる。「テクノロジー×デザインで、人間の未来を変える学校」というミッションを掲げているのはそのためです。
──「人間の未来を変える」というのは、大きな目標ですね。
寺田:自分でもすごいことをいっていると思います。卒業生が、本当に人間の未来を変えるようなインパクトを残す起業家になるのか、世界を変えるようなことにチャレンジできるのか。極めてチャレンジングで、息の長いプロジェクトです。でも、僕は日本にそういう学校は必要だと思うし、そういう人材を育てるサポートがしたい。Sansanの経営とともに、全力であたります。