「高専の立ち上げはスタートアップそのもの」

寺田:もちろん、悩みましたよ。Sansanという一部上場企業を経営している僕が学校の理事長に就任していいものかどうか、と。取締役会でも議論しました。ただ、議論を深めていく中で、僕個人が理事長として関わることも、会社として高専の設立を支援することもおかしいことではないという結論に至りました。

 Sansanとして新しい高専の立ち上げを支援するのは、CSRという観点からも、ブランディングの面から見ても問題はない。高専が優秀な人材を輩出し、将来的にSansanを支えてくれるかもしれません。そう考えると、Sansanにも重なってくる部分もあるだろう、と。逆に、会社としての関わり方をはっきりさせた方がすっきりすると感じました。

 既に、Sansanの社内に「神山まるごと高専設立支援室」をつくりました。僕も、理事長として自分の時間の20%を学校の仕事に使います。

──先ほど、「準備委員会を立ち上げた後、いろいろ滑ったり転んだりした」という話がありました。2020年6月に選出した学校長候補の辞退などのことを指しているのだと思います。この1年半あまりで何が起きていたのでしょうか。

寺田:準備委員会は2020年6月に、クリエイティブディレクターの菱川勢一さんを学校長の候補として選出しました。ただ、やってみてよく分かりましたが、高専の立ち上げはスタートアップそのものです。理事長や学校長のような核となる人材はかなりのコミットが必要になる。ただ、菱川さんも多忙な方で、学校立ち上げにかけられる時間が厳しくなりつつあった。そこで、辞退されることになったという話です。

──準備委員会と菱川さんの間で、スピード感にズレがあったという話も聞いています。

寺田:正直なことをいえば、そういうのもありました。先ほども申し上げたように、高専の立ち上げはスタートアップそのもの。スタートアップを立ち上げるような、起業家マインドを僕も期待しました。その面でいえば、少し目線が違ったかな、というのはその通りです。

神山まるごと高専の学生寮建設予定地に立つ寺田親弘理事長、大蔵峰樹学校長、山川咲クリエイティブディレクター兼理事

──学校を立ち上げた経験のある人はほとんどいません。それだけに、難しい面はありますね。

寺田:Sansanも簡単ではありませんでしたが、難易度は今回の高専の方が上です。本当に大変。

──2021年10月に文部科学省に設置認可申請する予定です。現在の進捗状況はいかがでしょうか。