トランプ大統領のアカウントを永久停止したツイッター(写真:ロイター/アフロ)

(山中俊之:神戸情報大学院大学教授/国際教養作家)

 バイデン政権がようやく発足した。

 大統領選挙の敗北をなかなか認めず支持者を扇動してきたトランプ前大統領の言動ため、就任式の混乱が懸念されたが、幸い混乱なく終わった。就任式には、トランプ氏は欠席したものの、ペンス前副大統領、クリントン、ブッシュ、オバマの歴代大統領が出席した。共和党関係者も多数列席した式典を無事に終えて、米国民主主義の安定性がかろうじて守られたといえよう。

 バイデン大統領には、コロナ対策、経済復興、気候変動問題、人種問題など多くの課題への対応が求められる。

 第2次大戦後に就任した米国大統領の中で、これほど課題の多い状況で就任した大統領はいない。政治家になって約50年。上院議員や副大統領を務めた老練な政治手腕が、早速試されることになる。78歳という高齢大統領には、米国のため、世界のために、しばらくは心と体に鞭を打って、精進をしてもらうしかないだろう。

「国家機関VS巨大IT企業」の戦いが本格化

 バイデン氏が取り組むべき課題の中で、日本のメディアの扱いがやや小さいが、世界経済に大きな影響があるものに巨大IT企業への対応がある。

 巨大IT企業の問題には、個人情報の保護やビッグデータを所有することに基づく優越的地位の行使、問題のあるコンテンツの拡散など多岐にわたる。実際、EUでは2020年末に明らかになった「デジタル市場法」「デジタルサービス法」などの新法制により、巨大IT企業に規制を加えようとしている。

 前者の「デジタル市場法」では、自社の製品やサービスを自社プラットフォーム上で競合他社より優位に扱ったり、他社から得たデータを自社のサービス向上に使ったりすることを禁じている。IT企業の競争的な環境を整備することが目的だ。違反の場合には巨額の罰金が課せられる。後者の「デジタルサービス法」では、児童ポルノやテロを扇動するコンテンツの拡散などを禁じる。

 米国でも、2020年10月に司法省が、グーグルがスマートフォンの製造者と契約して検索サービスにおいて競合他社を排除したことが独禁法(反トラスト法)に反したとして提訴した。今後、司法省が巨大IT企業を提訴する事例が増えるのではないかとの見方も強い。

 国家と巨大IT企業は至るところで戦いを本格化させている。