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年頭会見で「緊急事態宣言」再発令の検討を表明した菅首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 東京都の小池百合子知事が政府に緊急事態宣言の発令を直接求めようとしていた元日。菅義偉首相はこう言って、突っぱねる姿勢を示していた。

「小池はやること(午後8時までの営業時間短縮要請)をやらずに求めることばかり。1都3県の足並みが揃わなければやらない」

 これを間接的に聞いた小池知事は、まず埼玉県の大野元裕知事に「一緒に西村(康稔・経済再生担当)大臣に直談判しよう」と電話で了承を取り付け、その後、神奈川県の黒岩祐治知事にも同行を求めた。

 こうして2日夕、千葉県の森田健作知事も合わせ、4知事で西村大臣と面会することになるのだが、菅首相は小池知事により着々と外堀を埋められていることを知らなかったという。彼らの動向に関する情報が入っておらず、西村大臣も菅首相に細かな説明をしていなかったのだ。

 結局、4日の年頭記者会見で緊急事態宣言の発令検討を表明せざるを得ない事態に追い込まれた菅首相は、小池氏の対応の「後手」という印象をぬぐえない。

 このところ、ちぐはぐな政権運営の原因として指摘されるのが、菅首相の「軍師」となるような調整役の不在だ。外部の危機を首相の耳に入れる側近が少なく、これが政権としてのチームワークの欠如にもつながっている。

「官邸がどうしたいのか分からない」

「官邸が一体どうしたいのかよく分からない。下村さんの発信ばかりが目立ち、正直困っている。特措法を本気でやるなら、こちらもそれ相応の準備が必要だ」

 自民党の森山裕国対委員長は12月17日、衆院本会議場の裏にある控室を密かに訪れた加藤勝信官房長官に不満をぶちまけた。

 自民党の下村博文政調会長がこの直前、コロナ対策を強化するための新型インフルエンザ特別措置法の改正議論をめぐり、次期通常国会で改正する意向を突然ぶちあげていた。

 森山氏は当初、政府側から「特措法に手を付けるのはコロナの収束後」と聞いていただけに、官邸の真意をつかもうと加藤氏を呼び出したのだ。

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