緊急事態宣言を出した後、記者会見する菅義偉首相(左)と政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(2021年1月7日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

何もかもが遅い

 共同通信が1月9日、10日に行った世論調査によると1都3県の緊急事態宣言について、「遅過ぎた」が79.2%に上っている。政府のコロナ対応を「評価しない」も68.3%になっている。ほとんどの人が菅政権のコロナ対応に不満を持っているということだ。

 感染者の急増は1都3県だけではない。大阪府、京都府、兵庫県の近畿3府県も政府に緊急事態宣言の発令を要請した。愛知県や栃木県も同様の要請を行っている。感染者が爆発的に増えているからだ。だが菅義偉政権は、いまだにこの要請に応えていない。何をためらっているのか、理解できない。

 1月10日、NHKの日曜討論に出席した菅首相は、関西3府県知事が緊急事態宣言の対象に追加するよう要請していることに対して、「緊迫した状況であることは承知している」と述べた上で、「政府分科会の先生方は、もうしばらく様子を見て、分析したいという方向だったようだ」と述べた。まるで他人事のような答えだ。菅首相は、これまでの数少ない、短時間の記者会見でも、大事なことは同席している分科会の尾身茂会長に丸投げしてきた。

 専門家でないと答えられないような質問ならともかく、緊急事態宣言を発令するかどうかは政治判断の問題でもある。もちろん専門家の意見を踏まえることは大事だが、菅首相の場合、あまりにも自分の判断がなさ過ぎる。