前回の緊急事態宣言は、もっと緊迫感があった。街からは劇的に人が減った。だが今回は飲食店対策が中心である。感染拡大は飲食店だけではない。家庭でも感染が広がっている。日本医師会の釜萢敏(かまやち・さとし)常任理事も「飲食だけを抑えれば、うまくいくわけではないというのが共通認識。1カ月半、2カ月ぐらいの期間をみなければいけないのではないか」と語り、「感染地域をまたいだ人の出入りをどれぐらい抑えられるかがポイントになる」と強調している(1月7日付「産経新聞」)。

 釜萢氏は分科会のメンバーである。その分科会の共通認識が緊急事態宣言に反映されていないということだ。何か聞かれれば分科会に丸投げをしてきたにもかかわらず、都合の良いところだけをつまみ食いしているのが、今回の緊急事態宣言なのである。分科会の共通認識を取り込めば、飲食中心にはならなかったはずだ。県境をまたぐ移動制限も強力に推し進める必要もあるのだ。だがそういうメッセージはまったくなされていない。

 昨年の2月末に、当時の安倍首相が学校一斉休校の方針を打ち出した。これには自治体や医療関係者、自民党内からも「首相の独走」だという批判の声があがった。コロナ民間臨調によれば、ある官邸スタッフはコロナ民間臨調の聞き取りに対して、「同時期に行った一斉休校要請に対する世論の反発と批判の大きさに安倍首相が『かなり参っていた』ことから、さらなる批判を受けるおそれが高い旅行中止措置を総理連絡会議において提案することができなかった」と語っていたという。

 しかし、今から思えばこの一斉休校の方針は、決して悪いものではなかったと思う。これによって社会に緊張感をもたらしたからだ。GoToトラベルやGoToイートは、逆に国民から緊張感を奪ってしまったように思えてならない。もう一度、この時の緊張感を取り戻さないと感染拡大は止められないだろう。近所のスーパーマーケットを見ても、昨年の緊急事態宣言の際には入場制限を行っていたが、大晦日など超密状態でも制限はなかった。入場制限の呼びかけも行った方が良い。

 緩んでいる菅政権は、覚醒して責任を果たせと言いたい。