(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
新型コロナウイルス感染拡大による、緊急事態宣言が東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に、1月8日より発出された。
昨年12月31日には、東京都の新規感染者が1337人と、はじめて1000人を超え、年明けの2日には1都3県の知事が揃って政府に緊急事態宣言の発出を要請していた。結果的には、それを受けたことになる。
ところが、緊急事態宣言が決定した7日には、東京都の新規感染者が2447人と、その前日の1591人から一気に2000人を超えて過去最高を記録し、以降3日続けて2000人台で推移している。
ここへ来ての発出は、明らかに対応が遅い。その感は拭えない。
これをして、菅義偉首相の感染防止対策は後手後手にまわっている、という批評が目立つ。だが、菅首相の打ち出す対策は、「後手」なのではない。
むしろ「場当たり的」でしかないのだ。
「国と自治体のリーダーが一体感を持ち、明確なメッセージと具体的策を提示できれば」
それは、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の見解にも散見する。
緊急事態宣言が発出されるわずか2週間前の12月25日。菅首相は尾見会長と並んで会見を開き、こう述べていたはずだった。
「緊急事態宣言については尾身会長からも、今は緊急事態宣言を出すような状況ではない、こうした発言があったことを私は承知しています」
だから、緊急事態宣言は発出しない、その段階にない、としていた。
その発言をフォローするように、尾見会長は「3つの急所」を抑えれば、緊急事態宣言は必要ないと言った。
1つ目は、「飲食を介しての感染リスクが高い、そこを抑える」こと。
2つ目は、少人数で「なるべく家族とか友人とか、いつも一緒にいる人と過ごす」こと。
そして、3つ目についてこう語っていた。
「それから、3番目が、国、自治体のリーダーが、更なる市民の協力を得るべく、一体感を持って、明確なメッセージと具体的な対策を提示することが必要で、こうした急所を、国、自治体、国民、事業者が一体となって行えば、私は、今の感染状況を下方に転ずることは可能だと思っています」