先進国と途上国がない交ぜになった米国

──そもそものキャリアが変わっていますね。

大内:日本で小学校を卒業した後、父の仕事の関係でロサンゼルスに移り住みました。もともと勉強は嫌いで、このままでは将来がないとよく心配された学生生活でしたが、社会人になってから世の中で普遍的に必要とされる職業は何だろうと考えた結果、22歳で医師を志しました。

 ラファイエット大学、ボストンのパートナーズ・エイズ・リサーチセンター(当時)などを経て2005年、26歳でジョージタウン大学メディカル・スクールに入りました。現在は、救急科と内科の専門医であると同時に、終末期医療を研究しています。臨床をしながら次の医療をつくっていくという、自分がやりたかったことができています。もしコロナがなければ完璧な、充実したプロフェッショナルライフだったと思います。

──メディカル・スクールの時に、南アフリカで治療に当たったとあります。なぜ南アフリカなどの途上国に行かれたのでしょうか。

大内:日本と米国で平和に育ってきましたが、メディカル・スクールの時代に初めて、他の国では悲惨な生活をしている人がたくさんいる現状を知りました。そこで、途上国で働いている医療従事者を見てみたいと思い、2006年に南アフリカのダーバンに6週間滞在したんです。

 メディカル・スクールを卒業した後は、米国の医療過疎地域のクリニックでも臨床教育を受けました。この時に、最先端の医療体制が整った米国の中にも途上国のような場所があるのだと痛感しました。

 米国は世界を代表する先進国でありながら、発展途上国のような面もあります。そもそも感染症が多いし、エイズや結核、寄生虫など、アフリカの途上国と同じような病気が見られます。日本とは疾患の幅が違います。貧困層には糖尿病や高血圧、心臓疾患などの生活習慣病も多い。メディケイドがあれば医療を受けることはできますが、そこまでたどり着く知識と言語、スタミナが要ります。貧困層の人々にはその時間、精神的な余裕がないという点ではまさに発展途上国と同じです。

──これから冬にかけて、コロナの感染拡大が確実視されています。何か日本に向けてメッセージがあればお願いします。

大内:自分にできることはやることです。基本的なことですが、会食を避ける、マスクをする、手洗い、うがいをする。いっせいに感染して病院に駆け込んで医療崩壊を招くような状況が一番怖い。日本は大丈夫ではないかと思いますが、もしそうなったら病院、医療従事者はつぶれます。軽症の人は何とか隔離して家にいることです。日本でならできると思います。(構成:添田愛沙)