ゴルフに興じる選挙後のトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 11月3日に投開票を迎えた米大統領選。敗色濃厚なトランプ大統領は選挙に不正があったとして法廷闘争に訴えている。上院の帰趨は1月に実施されるジョージア州の決選投票に持ち越される見通しで、大統領選自体は終わっていない。ただ、各国首脳が相次いでバイデン氏に祝意を伝えるなど、バイデン政権誕生を前提に世界は動き始めている。現在のワシントンDCの状況と、バイデン政権の先行きについて、米政治に精通した酒井吉廣氏に聞いた。(聞き手は編集部)

──バイデン氏は米大統領選で当選を確実にしました。既に各国首脳との電話協議や閣僚指名についても取りざたされています。一方、トランプ大統領は選挙に不正があったとして、法廷闘争に訴えています。郵便投票などに怪しい点があれば法的手段に訴える権利がトランプ大統領にはあると思いますが、実際のところ勝ち目はあるのでしょうか。

酒井吉廣氏(以下、酒井):まず、「当確」は日本の表現であり、米国にはありません。日本のように「選挙管理委員会」が選挙をしっかりと監視しているわけではありませんし、システムとして「当確」という言葉は使いません。バイデン候補も「自分が勝った」と言っているのであって、当確だとは言っていません。

 次に、トランプ大統領に勝ち目があるかどうかですが、そもそもの考え方が違うと思います。特に、現段階まで来ると、どちらが勝つか、つまり270人以上の選挙人を取るかどうかではなく、勝者がいない場合にどうするかでしょう。そのために、下院で投票するなどのルールが決められているのです。

──「勝者がいない」というのはどういうことでしょうか。再集計を決めた州もありますが、トランプ大統領の訴訟が認められなければ、バイデン候補がこのまま勝利するということではないのでしょうか。

酒井:不正があったと明確な判断が下った州ではバイデン候補の勝ちとはできません。一方、その州での勝者がトランプ大統領になるかといえば、不正となった票数を正確に数えることはできませんから、そうとも言えません。つまり、どちらも勝っていない州が出てきます。

──トランプ陣営は疑惑に言及するだけで、その裏付けとなる不正の証拠を提示していないという報道があります。この点はいかがでしょうか。

酒井:既に、不正の話はどんどん出てきていて、不正だと主張する人々の宣誓供述書もあります。証拠を提示していないというのはどういう点でしょうか。米メディアの報道の仕方に問題があるのでしょうか。実際、死者の投票は投票用紙でわかりますし、買収されて投票した人の話も前回の記事でしました。

 日本の場合、地上波とそれ以外で報道の内容に差異があると聞いています。大統領選の状況があまり伝わっていないのは、そういう影響があるのかもしれませんね。