三木氏によれば、英会話スクールに関するアフィリエイトの記事は、こうしたもので溢れかえっているのだという。
アフィリエイトを利用した広告宣伝は、時に誹謗中傷や誇張表現、ステマなどの問題を含むこともあり、以前から警鐘が鳴らされてきたが、日本ではこれを規制する抜本的な法律が整備されていない。
アメリカでは、日本の公正取引委員会や消費者庁の役割を担う連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)が管轄している。業界側が消費者(インフルエンサーも含む)の口コミを禁止してはいけないことを法定した「消費者レビュー公正法」(Consumer Review Fairness Act of 2016)を設けて言論の自由を守る一方で、ステマはFTC法5条「不公正又は欺瞞的な行為」に該当し、インフルエンサー(アフィリエイター)マーケティングには利害関係の表示を課している。
ただし、どのようなときに利害関係の表示が必要になるかについては、その線引きはアメリカでも曖昧で、業界団体の自主的なルール作りが求められているようだ。
日本のネット広告については、現在、業界や企業の自主基準にゆだねられている状況だ。
例えばヤフーでは、2019年度に自社サイト内に入稿された広告のうち、審査で承認せず、掲載しなかったものが2億3000万件あったという。利用者に不快感を与えるものの他、明確な根拠を示さずに「業界ナンバーワン」などの最上級表示していた広告も14%が却下された。ヤフーがこうしたネット広告の審査状況を公表するのは今回が初めてのことで、これも媒体側でルール作りを進めていることを周知させるためのものだ。
また日本では、景品表示法によって虚偽や誇張表現など消費者の自主的かつ合理的な選択を妨げる行為は禁止されている。ただしこれを消費者庁に円滑な規制を執行してもらうためには、業界団体が業界ルールとしての「公正競争規約」を消費者庁との間で取り決める必要がある。三木氏らがJELCAを立ち上げた理由もそこにある。
新興業界はいかにして健全な秩序を作るか
アフィリエイト広告は手軽なマーケティング手法として定着しているが、使い方によってはステマ批判や誇張批判が付きまとう諸刃の剣となりかねない。ミスリードによって消費者にデメリットが生じるようなことになれば、企業のレピュテーションリスクに直結してしまう。
JELCAが作成したガイドラインを、消費者庁が規制対象の基準となる「公正競争規約」として認めるまでには、審査や手続きに2年程度の時間がかかる。それまでの間、消費者が各スクールを安心してチョイスできるようになるためには、業過団体のイニシアチブと消費者自身のリテラシーにかかっている。