T細胞の有無を検査することも一考

 7月17日、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究グループは、『サイエンスイミュノロジー』において従来の研究結果を踏まえ、「パンデミックの初期には、抗体のデータに診断や治癒の可能性を見いだしていたが、感染症の全貌が見えるほどに、T細胞のデータが必要であることがはっきりしてきた」と指摘した。

 この中で、診断において、新型コロナウイルスに対応したT細胞を測る検査の可能性を指摘している。結核では、T細胞を測定する「クオンティフェロン」と呼ばれる検査が存在している。さらに、診断の際やワクチン開発などにおいてT細胞に注目するのは重要と見ている。

 一方、過信も禁物であると同グループは見ている。T細胞の増加によって新型コロナウイルスを阻止できるのかは検証が必要と指摘。重症患者ではむしろT細胞の増加も認められ、病気にむしろマイナスに働く可能性もあるのだ。複数の種類があるT細胞によって、メリットやデメリットが決まってくる可能性もある。

 筆者は以前の記事で書いているが、そうした違いをうまく利用すれば細胞治療の可能性も開けると思う。日本でもテラやロート製薬が乗り出しているところだ。最低限言えるのは、これまで日の当たらない存在だったT細胞をより意識したウイルス制圧の戦略を立てていく必要があるということだろう。

 短期で消失すると指摘された抗体も可能性はまだまだ残されている。7月15日に著名科学誌の『ネイチャー』において、米国ヴァンダービルト大学をはじめとする研究グループは、分子の構造が一種類で均一に作られた抗体(モノクローナル抗体と呼ばれる)は、新型コロナウイルスの感染性をうまく抑えられると動物実験の結果などから報告している。抗体もばらばらな構造ではなく、性質を揃えれば、ウイルスのコントロールへの有効性を高められると見られる。

 抗体をどう作るか、いかに維持するかなど解決すべき課題は少なくない。これまでの記事で指摘してきたように、感染症を増悪させる「抗体依存性感染増強(ADE)」の弊害を防ぐ観点も依然として重要だ。

 免疫というと、抗体に関心が集まりがちだが、最新研究を見ていくと、T細胞も同レベルに大切だと考えられる。免疫パスポートの実現とも関係する。今は一般的ではないが、T細胞を検査できるような仕組みを一般化していくことも視野に入れておく必要はあるだろう。

【参考文献】

コロナワクチン 生産体制の整備 急務(公明党)

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