肉弾攻撃を担うT細胞が一縷の望み
ここ最近、新型コロナウイルスの免疫にまつわる研究が続々と発表されている。日本でも大きく報じられたので知っている方も多いかもしれないが、7月11日、新型コロナウイルスに抵抗するための「抗体」が短期間のうちに消失する可能性があると報告された。ウイルスへの抵抗力につながると考えられている抗体が思いのほか持続しないという研究結果であり、世界に衝撃を与えた。
英国キングス・カレッジ・ロンドンの研究グループが査読前論文として発表したもので、分析の結果、症状が出た当初こそ抗体は増えるものの、1カ月ほどで低下し、その後には検出できなくなる人がいると割り出した。抗体が消えてしまえば再び感染する可能性がある。それがコロナウイルス科のウイルスが原因の一つになる一般的な風邪とも共通するのではと、笑えない指摘を論文ではしている。新型コロナウイルスへの対策がより難しくすることになるため、悲壮感を持って受け止められた。
こうした「抗体」のもろさが明るみに出る中、暗がりに光明を照らしてくれているのが「T細胞」という別の形の免疫だ。
体内の細胞を描いた漫画『はたらく細胞』(清水茜、講談社)の分かりやすい表現を借りると、免疫には「バズーカ砲」と「肉弾攻撃」がある。バズーカ砲は抗体で、肉弾攻撃はキラーT細胞をはじめ外敵を殺す細胞性免疫だ。
今、バズーカ砲がすぐに弾切れしてしまうとの懸念が持ち上がっている一方で、肉弾攻撃を担うT細胞の方が長持ちし、新型コロナウイルスへの抵抗力を引き上げる上で不可欠と示した研究結果が続出しているのだ。