行政改革の一環として大学組織の法人化が進められたが・・・(写真:アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。国立大学の法人化の是非を理事長の森田朗氏が問う(過去9回分はこちら)。

研究能力や人材育成でじり貧に

 国立大学の研究能力の低下や財源不足が問題とされている。学長や学界の重鎮からも、「国立大学の法人化は失敗だった」という声が聞かれる。法人化後に運営費交付金が削減されて大学の運営が苦しくなり、若手研究者の育成ができないというのだ。

 私は、1990年代末の橋本行革において独立行政法人制度の創設に関わり、その後、国立大学の法人化にも関与してきた。その立場から言えば、このような「法人化失敗論」には違和感を覚える。毎年1%に及ぶ運営費交付金の予算削減によって国立大学がダメになったというが、それならば法人化しなければ、予算が十分に手当てされていたのだろうか。