予算や法律でがんじがらめだった国立大学

 国立大学の財政が苦しいことは理解できる。しかし、大学は運営を効率化する努力はしてきたのか。効率化とは、アウトプットは変えずに投入する資源の削減を図ることだ。単に業務を減らして予算を節約することではない。

 国立大学の法人化は、1990年代の橋本行革の過程で出てきたアイデアに基づいている。橋本行革では、国の行政組織の効率化を進めるために、独立行政法人制度を設け、多くの機関が移行された。国立大学もその対象になったが、独立行政法人のスキームは大学という組織にはなじまないという大学側の反対で、独立行政法人とは似て非なる国立大学法人制度が作られ、2004年に国立大学は、一斉に「国立大学法人○○大学」となった。

 それまで、国立大学は国の行政組織の一部門であり、研究や教育の内容についてこそ大学の決定に委ねられていたが、大学の予算も、組織のあり方も、国の予算制度、法制度によってがんじがらめに縛られていた。1990年にバブル経済がはじけ、経済が停滞して財政赤字も膨らむなか、国立大学へ配分される予算も削減は避けられない状況にあった。

 国の行政組織としての国立大学という枠組みの下では、主体的に組織改革を行うこともできない。一方、世界では新しい研究分野が次々と誕生し、このような国立大学のままではとても研究教育機関として新たな分野の研究に取り組むことなどできなかった。

 組織は変えられず、予算も削減される。そんな中で、国立大学が主体的に組織を改革し、人材を登用し、外部の社会と共同して研究開発を進めていくためには、国の行政組織の枠の外に出ることが唯一ともいえる選択肢と考えられた。

 そこで、文部科学省も財務省も、真意はともかく、法人化を奨励した。その場合、大学の組織や人事については自由化し、大学の主体性を尊重する。これまで、予算は支出費目を指定されていたが、法人化後は使途を指定しない運営費交付金として付与する。ただし、大学自身で内部の効率化を図ることができるし、競争的研究資金を含め外部資金の導入も認められることから、運営費交付金に関しては毎年1%削減することとされた。