賃貸市場を支えた在留外国人
仕事があるところに人は移り住み、仕事で得た賃金で家賃や住宅ローンを支払う──。この単純な因果関係から、仕事の多い都市圏の人口は増え続け、賃貸物件の需要が作られている。その賃貸需要の一端を担っている外国人需要がコロナショックで一変しつつある。
住宅需要を分析する時に私が重視するのは就業者数の動向だ。先の因果関係を見ても分かるように、就業者が増えれば家賃の支払い余力が増加するからだ。当然、就労機会の多い都心部の方が就労者が多く、その分、家賃の支払い余力は増える。
それでは就労者数はどうかというと、アベノミクスが始まった2013年以降、日本の就業者は360万人増加した。その内訳は、失業率の低下に伴う完全失業者数の減少と、女性や高齢者の社会進出だ。
実は、これ以外に統計に表れない数字がある。外国人だ。旅行で訪れる来訪者数は、2012年に856万人だったのに対し、2019年には3188万人と3.7倍に増えた。旅行者だけでなく、日本に住む外国人も2012年12月の203万人から2019年6月には283万人と80万人増加している。
在留外国人が増加した背景には日本の人手不足がある。
農業の世界を見れば、技能実習生は当たり前のように活躍している。企業も日本人を採用できないがゆえに外国人雇用を広げてきた。実際、20代前半の流入人口が最も多い。
しかも、政府は2019年4月から2025年までに、50万人の外国人労働者の受け入れを決めた。これまで在留外国人の定常的な増加は12万人超だった。そこに、毎年7万人を増やすのだから、年20万人の在留外国人が増える計算だ。
日本の総人口は既に減少し始めて10年ほどが経過している。そこに人手不足を背景とした外国人の流入があり、今後も大量に受け入れることを決めたわけだ。
その中でも重要なトピックに、永住権取得のためのガイドラインの改訂がある。永住権取得のために必要な在留期間は20年だったが、2017年4月に10年に短期化された。素行が良く、納税する働き手を受け入れるために扉を開いたのだ。その結果、外国人の流入超過が続いたが、彼らの目的の一つには永住権の取得が明確にあると考えられる。
総じて言えることは、日本人は減っているが、20代の外国人の流入で人口減は緩和されている。つまり向こう40年、労働力として期待できる層の受け入れに成功しているということだ。これはまさに「移民」である。