女子割礼のヴァリエーション

①    クリトリスの除去
②    クリトリスと小陰唇の除去
③    外性器を除去し、膣を縫い合わせる
④    ①~③に属さないもの。ハーブで小陰唇を伸ばすなど

 どのタイプも医学的に必要な手術ではないため、少なからず体にダメージをもたらします。それは、尿保留、尿道や肛門への負担、精神的苦痛、妊娠出産への障害など多岐にわたります。最もダメージが大きいのは③の「陰部封鎖」です。

 たとえば、ジブチでのやり方はこうです。まず、剃刀でクリトリス、小陰唇、大陰唇の黒い部分を切除します。その後、アカシアという木の棘で膣を縫い合わせてしまいます。そして少女が脚を動かせないように紐で縛り上げ、一週間ほど放っておきます。これは、傷口を早く癒着させるためです。

秘密結社の儀式

 女子割礼は、多くの場合、大人の女性になるための通過儀礼として行われます。アフリカの奴隷が作った国、シエラレオネの場合を見てみましょう。ここでは、ボンドー・ソサエティという女性の秘密結社の入社式として女子割礼を行います。秘密結社と言っても、別に世界征服を目論んでいる集団ではなく、現地の社会生活を構成する一つの団体にすぎません。

 そこでは、大人になる前の少女たちをボンドー小屋の中に連れ込み、目隠しをして全裸にし、押さえつけてクリトリスを切除します。もちろん麻酔などはなく、切り取るのも医師免許を持った者ではありません。少女が泣き叫ぼうが、暴れようが、一向にかまいません。こういう儀式はあくまで秘密結社のものなので、外部に漏れないように慎重に隠蔽されます。

 割礼を受けた少女は、ボンドーで女性としての嗜みを教わり、花嫁修業をします。これが終わると、少女たちは着飾って集落を練り歩き、自分たちの晴れ姿をお披露目します。

 いわば、日本の成人式で女性が晴れ着を着るのと同じです。この日だけは無礼講で、少女たちは歌い踊り、ご馳走や酒をふんだんに振る舞われます。こうして少女たちは大人の女になり、結婚することが許されるのです。

女になるための通過儀礼

 女子割礼は、紀元前2世紀ころのエジプトですでに行われていました。この頃に発見されたパピルスにそれらしき記述があることが根拠になっています。現代でも、女子割礼が行われる地域はナイル川流域に集中しているので、発祥の地はこの辺りなのでしょう。

 女子割礼はイスラム教の地域で多く行われているので、イスラム教の義務だと思われることが多いのですが、これは正しくありません。そもそも、コーランに女子割礼を命じる記述がないからです。もっとも、これをスンナ(ムスリムの義務)だと考える人々も少なくありません。

 では、なぜ女子割礼は行われるのでしょうか。先ほど述べたように、一つは大人になる通過儀礼、という意味が挙げられます。もともと通過儀礼には、女を女らしく、男を男らしくする意味合いがあります。しばしばクリトリスは男性的なものとみなされるので、これを切除することにより、本当の女になるというものです。

 これは男性の割礼でも同じで、男性器の包皮はしばしば女性的なものとみなされるので、これを切除することにより、本物の男になるとされているのです。

 そのほかに、「女性がレイプされるのを予防するため」「結婚するまで処女を守らせるため」「女の性欲を減退させ男がコントロールしやすいようにするため」といった説もあります。