韓国政府の財政出動は有効か

 もはや金融政策だけでは、韓国経済の悪化を止めることはできず、財政面からのテコ入れが不可欠であることが明白となった。しかし、ここで文政権による経済政策の失敗、放漫財政の付けが回ってきている。

 グローバル金融危機を迎えていた2009年3月、韓国政府は28兆4000億ウォンの補正予算を編成した。これは同年の本予算の10%に上る規模であり、今年新型コロナ対策として編成した補正予算11兆7000億ウォンの倍以上である。それでも韓国の財政健全性には問題はなかった。国家負債が低い水準に抑えられていたからである。

 しかし、文在寅政権の財政支出は膨張の一途をたどってきた。18年432兆ウォンから20年520兆ウォンへと21%ほど増加した。この間、財政支出の増加率は、経常成長率(実質成長率+物価)を大幅に上回ってきた。昨年で見ればそれぞれ財政支出の増加率が9.9%であるのに対し、経常成長率は1.1%に過ぎない。中央・地方の負債は18年の680兆ウォンから今年は815兆ウォンに増大する。文政権はこれまで総選挙を意識したバラマキ政策で、経済政策失敗の穴埋めをしてきた。そのツケが非常時に回ってきたのである。

 文在寅政権の下の経済政策が、金融・財政の健全性を低下させ、新型コロナへの有効な対策を困難にしている。文政権は、これまでもそれなりに経済対策を行ってきたが実効性は低かった。中小商工人を対象とした低金利融資は審査に2~3カ月かかるという。追加補正予算を出すというが、それは財政の健全性一層悪化させかねない。さらに、急激に低下した財政健全性が経常収支など対外健全性の低下と重なる場合、「格付けの低下」を招く恐れが高くなる。そうなれば、政府・企業の外貨調達費用の増加→対外健全性のさらなる悪化→ウォン安ドル高→外国資本の流出拡大といった悪循環につながってしまう。

 実体経済の悪化がさらに進み、それが金融危機となれば、韓国経済の回復は一層困難な道となろう。

 文在寅大統領は主要経済主体招待円卓会議で「経済危機長期化の可能性が高い」「連帯・協力の力を信じる」などと述べている。また、企画財政部の金容範(キム・ヨンボム)次官は16日、ソウル銀行会館でマクロ経済金融会議を開き、「過去の感染症事例で現れたグローバル経済の一時的衝撃後に反騰するいわゆるV字回復は容易でない」「U字型、さらにはL字型まで懸念される」と述べた。ソウル大学のキム・ソヨン教授は「実物経済が先に厳しくなり、金融圏に転移する可能性が高い」「2008年の金融危機よりも厳しく、これまでになかった状況」と述べている。文在寅大統領ら政権幹部はいまただならぬ緊張感の下で経済政策の操縦桿を握っているに違いない。

 文在寅大統領は、17日の閣議で「未曽有の非常経済時局」と述べた。新型コロナによるダメージだけならまだ乗り切れる余地はあったかもしれない。だが、それに耐えうるだけの体力は、それまでの文在寅大統領の経済政策により奪われてしまっていた。それが事態をより深刻化させている。文政権の手詰まり感は否めない。