新型コロナウイルスの影響で客足が急激に衰えたユニバーサル・スタジオ・シンガポール(写真:ロイター/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 日本のみならず、世界でも新型コロナウイルスが連日話題になっている。

 3月4日現在、感染が広がっている国の数は69カ国に上る。感染者数を多い順に見ると、1位は中国、2位は韓国で、そのあとに、イタリア、イラン、日本、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカ、シンガポールと続く。

 日本では学校を休校する措置が取られ、ビジネス面でもイベントなどが中止されるなど、大きな影響が出ている。今後、アメリカでも新型コロナウイルスの感染が広がる可能性が高いとみられていることもあり、世界経済などへの影響は一層深刻なものになると考えておいたほうがよさそうだ。

 そうした状況下、感染者を出している国の中で注目したい国がある。シンガポールである。

広さは東京23区ほど、疫病発生は国家の命取りに

 現在世界で10番目に感染者数が多いシンガポールに、筆者は住んでいたことがあり、現在も知り合いが多く暮らしている。普段は政府に批判的な彼らだが、改めて現在のコロナ対策について話を聞くと、「今回だけは政府を評価している」と口を揃える。

 シンガポールはマレー半島の最南端に位置する小さな都市国家である。面積は東京23区ほどの大きさで、人口は約560万人。日本同様に島国ということもあり、国内で強力な疫病が発生したら、一気に国家が致命的な状況に陥る危険性がある。しかもシンガポールは世界のハブとなっており、世界150カ国をつないでいる国だ。外国人の滞在者も非常に多い。

 そのため、シンガポールは感染症にはかなり敏感な国である。例えば、少し前の話になるが、シンガポールの就労ビザを得るのに、多くの申請者がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)検査で陰性だったことを証明する検査結果の提出を求められていたくらいだ。

 そんな国柄であるから、今回の新型コロナウイルスでも感染が広がるにつれ、危機感は一気に高まっている。というのも、国民の8割が中華系であるシンガポールには、普段から多くの中国人が入出国しているからだ。2019年には月平均33万人の中国人が訪れている。ただし現時点まで、シンガポールの新型コロナウイルス対策は世界的に高く評価されている。いったいシンガポールはどのような対策を取っているのだろうか。