2月29日、人影も車もまばらな武漢市内の様子(写真:Featurechina/アフロ)

 中国国内で初めて、新型コロナウイルスの発生を警告して公安(警察)に罰せられ、その後、自らもコロナウイルスにかかった武漢市中心病院の李文亮医師(享年31)の訃報に、中国全土が騒然となったのは、2月上旬のことだった。あれから約1カ月を経て、再び1人のコロナウイルス患者のミステリーを巡って、大騒動になっている。

どうやって武漢から北京に来たのか?

 この患者は、「H」という頭文字の姓を持つ女性ということしか分かっていない。そのため、「H女士」と呼ばれている。「女性の性は『黄』(Huang)であり、名前の最後の文字は『英』である」として、「黄某英」「黄女士」などと記すメディアもあるが、これは確定したものではない。

 このミステリーは、2月26日、北京市東城区崇外街頭という首都の中心地区の一角にある高級マンション群「新怡家園」の1階掲示板に、緊急の張り紙が出されたことから発覚した。そこにはこう書いてあった。

<2月24日、新怡家園7号棟の3単元(3番目のエレベーターで上がる部屋の意)で、新型コロナウイルスの患者が確認されました。その患者、H女士は、2月22日に武漢から北京へやって来て、7号棟3単元に住んでいました。H女士は18日に武漢で発熱しましたが、北京へ来てから検査を受け、陽性と分かったものです・・・>

 億ションの住人たちは、この掲示板を見て、2つのことに驚愕した。1つは、自分が住むマンションに、ついにコロナウイルスの患者が発生したということで、これは、いまや北京ではよくあるケースだ。だがもう1つは、「一体どうやって武漢から北京に来たのか?」ということだった。