3月10日、武漢入りした中国の習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

 ダウン、ストップ、ダウン、ダウン・・・。

 3月12日のニューヨーク株式市場が、とんでもないことになった。前日から2352ドルの暴落で、ダウ平均は2万1200ドルまで落ち込んだ。このペースで行けば、今週中に2万ドルを切ることになる。9日月曜日に続く、今週2度目の暴落である。

 おそらく、誰よりもショックを受けているのが、ドラルド・トランプ大統領だろう。一時は、強力なアメリカ経済の後押しを受けて、大統領選で「再選確実」と言われていたが、もはや五里霧中になってきた。

 もしかしたら、現時点では劣勢が伝えられているが、「社会主義者」と見られている民主党のバーニー・サンダース候補が、大統領になってしまうかもしれない。1930年代のニューディール政策ではないが、こういう危機の時には、社会主義的な政策が支持されるものだからだ。

「中国をアメリカ的な民主国家に覆される前に、アメリカを中国的な社会主義国家にする」——このことは、かねてからの密やかな中国の願望だ。もしかすると中国は、はからずも今回の新型コロナウイルス危機によってそれが成就するかもしれないと、アメリカの状況を注視しているのかもしれない。

アメリカよりも危機に強い中国

 世界ナンバー1のアメリカとナンバー2の中国がガチンコ勝負をすれば、アメリカが勝つ。そのことは、過去2年の米中貿易摩擦を見れば一目瞭然だ。中国経済はアメリカ経済の3分の2の規模しかないため、戦いが長期化していくほど、体力負けしていくのである。それで今年1月15日、中国がアメリカにゴメンナサイして、第一段階の合意という「休戦」に、何とか持ち込んだ。

 だが逆に、今回の「コロナ・ショック」のような危機が起こると、中国の方がアメリカよりも、ある意味「強い」のである。