(舛添 要一:国際政治学者)
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府の対応は後手後手に回ってきたが、ここに来て小中高校の一斉休校など唐突な決定を行い、日本中を混乱に陥れている。
政策に科学的、医学的な合理性がないこと、専門家に諮問するにしても、相反する見解を十分に聴取した上での緊張感溢れる政策決定ではなく、いわば御用学者の意見を取り入れたものにすぎないことは、厳しく批判されなければならない。
「自宅より学校が危険」とは断言できない
中国における5万6000件の症例を分析したWHOの報告によれば、感染は大人から子どもへであって、子どもから感染した大人は殆どいない。また、子ども同士の感染もあまり報告されてなく、多くの患者は病院ではなく家の中で感染しているという。また、19歳以下の感染者は、全体の2.4%しかいない。
新型のウイルスであるから、まだその特性は100%解明されたわけではないし、子どもは感染していても症例が出ないだけなのかもしれない。それを考慮に入れても、以上の報告を前提にすれば、学校の一斉休校の疫学的合理性は薄れてしまう。反対に一斉休校による被害が各地で報告されているが、そのマイナスのほうが遙かに大きい。
つまり、「学校のほうが家よりも危険だ」と断言できないのである。家にいて、たとえば祖父母から感染する確率の方が、学校に終日いて子ども同士で感染する確率よりも高いかもしれないのだ。