理想は1975年頃の食事

現在と比べて、昭和後期頃の日本食はかなり質素だった。

 被験者に40歳代以上の人を選んだのは、生活習慣病のリスクが高くなる年代だからだ。「調査の結果、米と味噌汁の組み合わせが健康指標と相関が高かったわけですが、この年代の人たちは1975年頃の食事の経験もしており、“東北大学の調査”を裏付けているかもしれないと考えました」と、古賀さんは話す。

 古賀さんの言う「東北大学の調査」とは、同大学の研究グループが1960年以降の15年ごとの日本食の献立と健康維持の有効性などの関係性を調べたものだ。1960年はまだ戦後の色が濃く質素であり、また、1990年代になると欧米化が進んでいた。その中間の1975年の食事が、適度でバランスのよい理想的な日本食だった。動物実験や疫学調査でも1975年の食事が健康的であることが示された

 40歳代以上の人は1975年頃の食事を経験し、いまもその食生活を続けている可能性が高い。実際、今回の調査でもそのような食事がメンタルヘルスに貢献している可能性が示された。

 日本食は多様なものを食べているのが特徴で、ひとつの食材の影響に言及することは難しい。しかし、この研究では「ご飯と味噌汁」を中心にいろんなものをバランスよく食べるのがよいという効果的な食べ方が見えてきた。

「一つひとつの食材の影響は小さく、いろんなものを組み合わせて食べるのが重要なようです。ご飯で効果が見られたのは、ご飯と味噌汁とともに食べる納豆や緑茶などの効果が介在しているのでしょう。主食が変わればおかずも変わりますからね。日本人にとっては、ご飯と味噌汁の食事はホッとする。こんな気持ちも脳に影響しているのでしょうね。また、今回はできませんでしたが、魚を中心として解析したら別の効果も得られるかもしれません」と古賀さんは説明する。いずれにしても食べ物と脳の研究はまだ始まったばかりで、今後の展開が待たれる。

 食べ慣れた食事に効果があるのならうれしいことだ。今日のランチはサバの味噌煮定食などいかがだろうか。