話題の「ω3脂肪酸」、サプリの効果は未知数

 近頃、健康によい油としてω3脂肪酸を成分に含む油脂がメディアなどで取り上げられている。一般的に油脂は、グリセリンと脂肪酸が結合してできている。脂肪酸の種類は多く、炭素数が多いものや少ないもの、構造の中に二重結合のあるものやないものなどがある。EPAやDHAは構造内に二重結合をもつ脂肪酸であり、「ω3」とは脂肪酸の構造内の二重結合の位置を示したものである。EPAやDHAのほか、植物油に多く含まれるαリノレン酸もω3脂肪酸に分類される。ω3脂肪酸は、ヒトの生体内で合成されないので、食物などから摂取しなければならない。そのため「必須脂肪酸」ともいわれる。

 EPAやDHAなどのω3脂肪酸が注目されるようになったのは1970年代のこと。イギリスの研究者ハンス・オラフ・バンらが「グリーンランドの人たちに冠動脈疾患の患者が少ないのは、魚油に含まれているω3脂肪酸をたくさん摂取しているからではないか」という仮説を出したことが始まりだ。やがて、脳神経組織にDHAが多く含まれていることから、DHAは脳の機能にも大きな影響を与えているのではないかと考えられるようになった。

 今では、記憶や学習機能を向上させる作用や、神経保護の作用などが報告されている。また、EPAは血液凝固を防ぐ作用が知られ、両者を適切に摂取することが、脳機能の向上や認知症予防の効果つながると期待されている。

 ただ、ω3脂肪酸のサプリメントを飲んだからといって、効果があるかといえば、それはまだよく分かっていない。もともとω3脂肪酸は化学的に不安定で酸化しやすいので、魚でも干物などに加工している間に変化している可能性がある。ましてやサプリメントなどにして効果が保持されているのかどうかの科学的根拠は十分にはない。そのため、食事で新鮮な魚をたくさんとったほうがよいという考えもある。

伝統的な日本食はメンタルヘルスを改善する

 魚の多い食事といえば、私たちがふだん食べている日本食を思い浮かべる人も多いのではないか。実際、伝統的な日本食の食事成分にはメンタルヘルスを改善する可能性があるという報告が、防衛医科大学校助教の古賀農人さんらによって報告されている。古賀さんは、「米と味噌汁を中心に、いろいろなものを組み合わせた食事を規則正しく食べることが重要です」と話す。