日本食は健康によいとよくいわれるが、意外にも日本食がどのように健康をもたらすかについて研究された例は少ない。一方、よく研究されているのは「地中海食」とよばれる、イタリアやスペインなど地中海沿岸における食事である。現地の人びとはワインやオリーブオイルなどをたくさん食べ、生活習慣病のリスクが低いことが示されている。

「地中海食は味付けや食材などがシンプルなのに比べて、日本食は多様で複雑。そのため特定の食材や成分と効果が、なかなか結び付かなかったのです」と、古賀さんは日本食研究の難しさを説明する。

 そもそも脳の機能を調べること自体とても難しく、たとえばうつ病をとっても、まだ原因すらよく分かっていない。まして、食事との因果関係を直接調べることは困難だ。

 そこで、食事と脳の機能の関係は、特定の人間の集団を対象とした疫学研究によって調べられることが多い。比較的研究が進んでいるのはやはりDHAやEPAで、うつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関わりなどが知られている。

 古賀さんらは、40歳代以上の健康な男女278人に食事調査を行った。1カ月にわたり、食事内容とともにメンタルヘルスに関する質問に答えてもらい、解析した。調査結果によれば、パンや麺類ではメンタルヘルスの指標との関わりが示されなかったが、ご飯(米飯)については「生き生きと暮らす」などといった生活の質や、睡眠の質の改善に関わることが観察された。

 さらに、ご飯と味噌汁を組み合わせた食事では、睡眠の質、抑うつ、衝動性の改善との関わりが見られ、心が落ち着いている傾向があった。

 一方、ご飯をたくさん食べればいいのではなく、ご飯と味噌汁を中心とした食事が影響を与えていると考えられた。