ほかにも、室内の空気の“質”に影響を及ぼす物質は多々ある。人が呼吸によって生み出す二酸化炭素や、暖房器具などによって発生する一酸化炭素などの燃焼物も一例だ。ペットを飼っている場合は、ペットから発生するアレルゲンの影響もあるし、家族に喫煙者がいる場合は、たばこの煙による空気の汚染もある(注2)。そのため、「一般に、空気の汚染度は、外気に比べて室内の方が高いと言われています」と坂部教授。

(注2)「平成26-27年度 厚生労働科学研究 科学的根拠に基づく シックハウス症候群に関する 相談マニュアル(改訂新版)」

シックハウス被害の相談件数が再び増加傾向に

 家の空気の汚れと聞いて思い浮かぶのが「シックハウス症候群」だ。建材に含まれるホルムアルデヒドに代表される化学物質が揮発し、室内に溜まることでめまいや吐き気、頭痛・眼・鼻・のどの痛みなどの健康被害を発生させ、かつて大きな社会問題となった。

 2003年に建築基準法が改正され、ホルムアルデヒド量が制限されたこともあり、それ以降、シックハウスによる被害を訴える相談件数は大幅に減少。シックハウス症候群に関する記事もすっかり影を潜めていたが、実は2014年以降、住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられているシックハウス被害の電話相談件数が4年連続で増え続けていた。2018年は減少したものの、新築とリフォームを合わせて121件の相談があった。

 新たにシックハウスの問題が指摘され始めた背景には、住宅の高気密化の影響がある。現代の住宅は、暖房効率上昇・省エネルギーを目的に様々な建材や建築方法が開発され、家の高気密化が進んできた。その一方で、高気密がゆえに、部屋の空気はいつも適切な換気をしていないと、空気に溜まった汚れが排出されにくいというデメリットが指摘されている。

アレルギーリスクを高めるフタル酸エステル類

 さらに、規制とのいたちごっこのような面もあるが、建材などに使われる様々な代替物質の影響もある。実際、新たな未規制の化学物質が原因とみられるシックハウス症候群が発生し始めたことを鑑み、厚生労働省は2019年1月、新しい指針値を発表している。これによると、塗料や芳香剤などに使われるキシレンの上限値が下がったほか、プラスチックを軟らかくする添加剤として用いられるフタル酸エステル類についても、指標と指針値が改訂されている。