一般企業に勤めるビジネスパーソンなら、朝、通勤のために家を出て、帰宅はいつも夜遅めという人が大半だろう。「平日は、家にはほぼ寝に帰るだけだから、室内の空気なんて気にしたこともない」という人もいるかもしれない。「実際、日中、寝室はほとんど使われないため、締め切ったままという家庭も少なくありません。ですが、そんな換気が不十分の寝室のクローゼットで着替えをする時には、例えば防虫剤などの化学物質にも注意が必要です」と坂部教授は話す。
というのも、「防虫剤は衣類にまとわりつくように作られている化学物質なので、空気よりも重く、床から1~1.2メートルぐらいの高さのあたりに溜まってしまいがち。ベッドで寝ている方はちょうど呼吸をする高さに入る範囲になりますし、布団で寝る方への健康影響ももちろん考えられます」。
化学物質の影響で倦怠感や頭痛、メンタル不調を招くことも
寝室で注意すべきなのは、防虫剤に限らない。特に高温多湿な夏場に、壁紙などの建材類をリフォームした場合、放散される化学物質の量は通常よりも多くなる。そのほか、輸入した家具、カーテンやカーペット、抗菌加工や防ダニ加工を施した製品、合板とプラスチックが使われた製品、合成皮革のソファ、様々なプラスチック製品からも化学物質は揮発するのだという(注1)。
(注1)『家庭でできる身のまわりの化学物質から家族を守る方法』(PHP研究所、坂部貢著)
そんな寝室の換気や掃除を怠ると、一体どんなことが起こるのだろう。「こうした環境で眠り続けていることが原因で、ある日、化学物質への適応能力を超えてしまうことがあります。すると、微量の化学物質に触れただけでも、冒頭のチェックリストにあるように、疲れやすくなったり、頭痛や下痢、精神的なストレスを招くなど、体調を崩す可能性が十分あり得ます」と坂部教授は警鐘を鳴らす。