「民主化を求める香港市民」と「監視社会を是とする上海市民」とのギャップが印象的だったが、そこには民主主義の未来がかかる新しい問題が浮上しているのである。

格差拡大に対する不満が世界中で噴出

 11月9日は、ベルリンの壁崩壊30年の記念日である。東西冷戦の終焉、つまり資本主義や民主主義が、共産主義や独裁政治に勝った輝かしい日である。

 しかしながら、この30年を振り返り、今の世界の状況を見ると、素直には喜べない。それは、勝ったはずの体制の下で、様々な問題が噴出しているからである。

 アメリカでは、トランプ政権がアメリカ第一主義を唱え、保護主義に走っている。また、イギリスでは国民投票でEU離脱が決まりながら、議会が具体的方針を策定できずに、政治が混乱の極みにある。また、各国でネオナチのような極右が勢力を拡大し、移民や難民を排斥している。このようにポピュリズムが猖獗を極める状況は、30年前には予想できなかったことだ。

 このポピュリズムの背景には経済をはじめとする格差の拡大がある。世界中で、格差の拡大に不満を抱く人々が街頭に出て抗議活動を行っている。フランスの「黄色いベスト」運動がその典型である。最近は下火になったとはいえ、運動を組織するリーダーが不在にもかかわらず、フランス各地で多くの人々が毎週土曜日に参集して「平等」への要求を発している。

 南米を見れば、チリでも地下鉄の運賃値上げを発端に一気に反政府デモが激しくなった。そのためピニェラ大統領はAPECとCOP25の開催を断念せざるを得なくなったほどだ。

 チリは、南米の最優等生で、一人当たりGNPは、アルゼンチン、ブラジルを抜いてトップである。だが問題は貧富の格差だ。ジニ係数(所得格差を示す基準で、0〜1の間で、0が完全平等、1が完全不平等)で南米のみならず、OECD加盟国でも最高値はチリである。

 米中貿易摩擦の影響で世界経済が縮小するとともに、主要な輸出品である銅の価格が下落、通貨ペソの価値も下がって輸入品価格の高騰を招いた。電気料金の値上げなどが貧しい人々の生活をさらに苦しくしている中で今度は地下鉄運賃の値上げである。市民は街頭に出て抗議活動を展開し、すでに20人もの死者が出ている。格差の存在が、事態をここまで悪化させているのである。

 大統領は、地下鉄運賃値上げや電気料金値上げを撤回し、最低賃金引き上げなどの譲歩をしたが、いったん爆発した反政府活動が収まる兆しはない。

 ボリビアでは、エヴォ・モラレス大統領の退陣を求める野党側の攻勢が強まっている。10月の大統領選挙を不正だとして不満が嵩じており、街頭での抗議行動が激化している。国民の不満が爆発し、民主化を求める声が高まっているのだ。背景には、失業問題などの経済問題がある。