中東のレバノンでは、10月半ばにスマホの無料アプリ「ワッツアップ」への課税方針が公表されたことが発端となり、反政府デモが拡大中だ。ここでも経済情勢の悪化と格差の拡大が背景にある。

 レバノンは、大統領はキリスト教、首相はイスラム教スンニ派、国会議長はイスラム教シーア派から選出、18ある宗教・宗派ごとに議会の定数を決めるなどの宗教・宗派のバランスをとる工夫を行っているが、今回は宗教・宗派対立ではなく、非エリートのエリートに対する、貧者の富者に対する異議申し立てとなっている。

 イラクでも10月初めから反政府デモが激化し、すでに270人以上が死亡している。サレハ大統領は、事態を収束させるため総選挙実施を表明したが、失業などに不満の抗議活動は収まっていない。

 アルジェリアやエジプトでも、今年になって政府に対する抗議デモが行われている。

 以上のように、南米や中東でも格差の拡大に対する民衆の不満が反政府デモとなって拡大している。

「平等」の視点忘れてしまった民主主義

 30年前に高らかに勝利を宣言した資本主義や民主主義が、このような問題に直面しているのはなぜだろうか。それは、社会主義や共産党独裁というライバルが敗退してしまったからである。単純化すれば、勝った前者は「自由」を、負けた後者は「平等」を象徴する。

 競争相手が健在なときには、西側は、社会主義、つまり「平等」の視点を政策に組み込んだ混合経済体制、アナソニー・ギデンズの言う「第三の道」といった政策を展開した。北欧型の社会民主主義である。

 ところが、今や自由奔放な資本主義が世界中を席巻し、グローバル化の進展とともに、格差が急激に拡大してしまった。

 それに抗議して世界で起こっているデモは、まさに「平等」を求める動きである。アメリカでも、若者の間で社会主義が注目され、アメリカ大統領選挙で社会主義者と称される民主党のサンダーズ候補が一定の支持を集めているのも皮肉な現象である。

 資本主義や民主主義は、生き残りをかけて、「平等」を実現するための努力を展開しなければならない。さもないと、共産党一党独裁の下で、社会主義市場経済で繁栄し、5G、AIによる監視社会を構築しつつある中国との厳しい戦いで勝ち残ることは難しくなるだろう。