各自が自分らしく働き始めると、それを束ねるマネジメント側には負担感が生じる。その割にビジネス面で成果が出ないと気持ちがなえる。

 だが、真のダイバーシティはビジネスの成功に直結するものだ。だから次なるステージ2の鍵は、個性を引き出しシナジー効果を生み出すマインドとマネジメント力の養成にある。

 言い方にあまり左右されず、内容にフォーカスするステージなのだ。冒頭の私が失敗してしまった不動産バブルの事例をもう一度、思い起こしていただきたい。上司は笑って「そんなことないでしょう」と言っただけ。決して高圧的であったわけではない。それでも自信の持てない若手にとっては、変節するに十分な言葉だった。

グローバル企業はなぜ強いのか

 グローバル時代とは即ち多様性の時代である。異なる価値に触れたときに、「自分と違っていて良いな!」とポジティブに感じ、そこからビジネスのヒントを創出できるのがグローバル時代に活躍できる人財の要件だ。起業家ばりに、ビジネス目標の実現に燃えていれば、異なる価値観をマネージする手間よりも、ヒントを得る喜びの方が大きく感じられるようになるはずだ。

 われわれは何のために働いているのか? いまの会社で、部門で何を成し遂げたいのか? それを考えることが“真の”ダイバーシティのスタート地点となる。

 私はよく「社会人にもなって、目的なき試験勉強をするのなら、燃える目標を探すことに時間をかけたほうが良い」とよく若者に助言してきた。考えてもすぐに答えが出ないから、時間を浪費しているような不安を感じる気持ちはよくわかる。だからこそ、自身の目標探しに向き合う意味がある。グローバル企業の強さの秘訣はここにある。

 仮でも良い。燃える目標を見つけられた人財は、信念を簡単に曲げなくなる。努力もいとわなくなる。だから成長し、ビジネスパーソンとしての市場価値があがるのだ。面談してもそういう人財の言葉からは気迫を感じ取れる。

 ラグビー日本代表の躍進をみれば、目標を持つエネルギーがいかほどのものか、わかってもらえるはずだ。

 自分を取り巻く環境の急速な変化が予想されようとも、先取りして自己変革に取り組める人は少ない。常に成長し続けられるのは、心を燃やせる目標を見つけられた人財だけなのだ。