あなたがSNSのユーザーなら、フォロワーや「いいね」の数をついつい気にしてしまっているかもしれない。これは「承認欲求」の現れと言える。誰しも「他人から認められたい」という欲求は多かれ少なかれ持っているもの。つまり自然なことなのだ。
そしてそれはSNS上だけでなく、ビジネスにおいても組織を活性化させるために無視できないファクターになっている。
始まりは段ボールで作った投票箱
自分の仕事ぶりについて、上司や部下、同僚がさりげない一言で評価してくれたおかげで、気持ちがアガり、「また頑張ろう」と前向きになった、なんていう経験は誰もが持っているものだ。逆に、周囲からの些細な一言で気持ちが沈み込むことだってある。
こうした経験のうちポジティブなものだけが組織の中で継続的に生まれるよう、同僚に向けた感謝や称賛の言葉を、ちょっとした額の「ボーナス」とともに簡単に送り合えるサービスを展開する企業がある。マザーズ上場のインターネット広告サービスを手掛ける「Fringe81」の子会社である「Unipos」(ユニポス)だ。
サービス開発のそもそものきっかけは、段ボールで作った投票箱だった。Fringe81は2012年の設立後、順調に業績を伸ばしていったが、それに伴い社員の数も増え続けるうちに、ある「悩み」にぶち当たったという。Uniposの代表取締役社長・斉藤知明氏が語る。
「当時、私はまだFringe81に入社していませんでしたが、創業当初の10人くらいの規模の時には、同僚がどんな仕事をしているとか、どんな仕事が得意だとかいうことが把握しやすかったのに、30人を超えるくらいになってきたあたりから、『あいつとは最近、話していないな』とか、『あいつがいまどんな仕事をしているのか、把握できていないな』というコミュニケーション不足を感じるようになっていたそうです。
それはマネジメント側にとっても大きな問題でした。さまざまなスタッフの貢献の積み重ねのお陰で、複雑なビジネスの中でも、お客様に提供できるサービスを生み出すことができているのに、スタッフそれぞれの仕事内容を正しく認知できていない。それでは、正しい貢献をした人に正しく報いるという会社の理念に反するなという悩みが生じていたのです」
そこでFringe81代表田中弦氏自らが2013年にスタートさせたのが、「〇〇さんのここが素晴らしいと思いました」などと書いて、オフィス内に設置した段ボール箱に投票する「発見大賞」という仕掛けだった。他人の長所を社内に周知させる「他己紹介型」の制度で、月に一回、投票者にその内容をプレゼンしてもらい、優秀者を表彰するというものだった。
「周囲が気づいていないスタッフの隠れた頑張りや貢献を一番知っているのは、直接の上司ではなく、隣に座っている同僚です。だったら、その隣に座っている人が発見した『この人のこういうところが良かった』という点を、みんなに発表する制度があったら、日々埋もれていく従業員の貢献がみんなに認知されていく会社になっていくのではないか、と。何をやっているか分からない人のことは信頼できないけれど、この制度によって、その人の知られざる頑張りが社内に周知されれば、そこから互いの信頼が生まれます。そんな組織にしたくて始めた取り組みでした」(斉藤氏)