「発見大賞」の効果はすぐ現れたという。
「それまで埋もれていたインフラエンジニアの貢献や営業マンが客先に行く前の事前準備などが称賛の対象として投票され、他部署のスタッフから『あいつ、こんなことをしてくれていたんだ』なんていう気づきが増えたのです。その結果、エンジニアから『営業の人たちがもっとお客様にアピールしやすいように、こんな機能を乗っけてみよう』といった提案が出てきたり、表彰された人に別の部署の人が話を聞きに行ったりという動きが活発になるという目に見える効果が現れました」(同)
この段ボール箱を使った「発見大賞」は、その後、グーグルフォームや、Qiitaという社内用の情報共有ノートを使って運用されるようになったが、工数がかかる、月に一回しか発表されない、締め切りの月末にまとめて投票されることが多く月初の行動が忘れられがち、などの「弱点」があった。
そこで「発見大賞」を発展的にリニューアルし、「ピアボーナス」の仕組みを取り入れてシステム化したのが、後に子会社の社名にもなった「Unipos」だった。
スタッフが互いにボーナスを送り合うシステムに進化
ピアボーナスとは、企業が従業員に支払う報酬とは別に、従業員同士が一定の枠内でお金を送り合う「少額のボーナス」のこと。ボーナスの原資は企業が負担し、従業員一人ひとりに一定額を割り当てておく。従業員は、その仕事ぶりに心を動かされた上司や部下、同僚に対し、自分が保有している金額の枠内で、コメントとともに「ボーナス」を送るのだ。
「従業員同士が『ありがとう。こんな取り組みがよかったよ』と直接言葉をかけあうのもいいのですが、それだと2人の関係の中で完結してしまいます。会社としては、できればそれをオープンにして、みんなに周知し、周りに刺激を与えてほしい。そこで、オープンにしてもらうための仕掛けとして、感謝の気持ちと一緒に、コーヒー一杯分くらいの金額に交換できるポイントを送り合えるようにしたんです。このシステムをFringe81の中で運用し始めたら、お金がつかなかったころに比べて、利用される頻度は段違いになりました」
社内でその効果を実感したFringe81では、ネット上にUniposを紹介するランディングページを作ってみた。「こういうシステムを作って運用してみたらものすごく上手くいった」ということで、斉藤氏とFringe81の幹部数名がフェイスブックでシェアしただけで、2週間でおよそ300件の問い合わせがあったという。そこから2017年6月に社外向けサービスとしてリリースし、
「他社に薦める際にわれわれが伝えているのは基本的に2つ。1つは、従業員が『仲間から認められた』という実感を得ることで、その時点で結果が出ていないチャレンジでも『もう少し頑張ってみようか』と前向きに取り組めるようになるということです。
もう1つの効果は、他の人の成果を知ることができるようになること。誰かが同僚にポイントを添えて称賛や感謝の言葉を送り合っているのを、第三者も見ることができ、そこに『拍手』という形で共感を添えることもできます。この拍手もポイントになります。「あの人、こんなに頑張っているんだ」ということを知れば、その人が困っていたら助けてあげたいなという気持ちになるし、『自分も頑張ろう』という意欲も湧いてくる。
自分の努力や挑戦が認められ、また周りの頑張りを知ることで、自然とそれぞれのスタッフがいきいき働くようになる。Uniposを使うと、会社全体がそういう空気に変わっていくんです」(同)