そこで、どうしたのだろうか。

「『TOKINAX(トキナックス)』という充填技術ブランドを立ち上げました。鍵となる技術は3つです。特殊な充填技術、アルミを含む片面4層構造のフィルム(包装資材)、そしてレシピコントロールです。この3つを掛け合わせることで、5年の保存期間が達成できる。『時をなくし』たかのように、時をコントロールできるのです」

 実際に5年備蓄できることを確認するため、保存試験を実施したが、途中で菌が出た時点で終了となる。

「ひたすら待つのが大変でした。5年保存できるゼリー食は世界初です」

 製品化が見えてきた2016年、ワンテーブルを設立。そして2019年5月、宮城県多賀城市に自社工場を竣工。1日5~7万食を作ることが可能だ。

宮城県多賀城市に竣工した工場。(画像提供:ワンテーブル)

 1日約7万食! そんなに需要があるのだろうか。

「1億2000万人(日本の人口)×3食×3日間で10億食の市場があると言われます。防災の啓発活動によって、皆さんが『防災備蓄食を買わないといけない』と思ってくだされば、(備蓄期間によって)この数はもっと増える。伸びしろがあると思っています」

宇宙との出会い

 そして備蓄食の需要は、防災だけではなかった。

 現在、ワンテーブルが取り組んでいるのが、「宇宙食」。JAXAとワンテーブルは、J-SPARCの枠組みの中で共創活動を行っている。

 避難所生活は、宇宙飛行と共通点が多い。閉鎖環境、水が貴重、栄養不足、ストレス環境・・・。どちらも極限環境であり、互いの知見を生かせるはずだ。