私が代表を務める青山社中でもこの件について試算したことがあります。2015年、まだ毎年子どもが100万人生まれる前提で計算したものですが、目標は「出生率を2以上」にすることですから、第一子、第二子が生まれたらそれぞれ100万円、そして第三子が生まれたら300万円を配るというプランを実行したとします(第四子以降も100万円前提)。するとかかる予算は年間1兆2000億円ほどです。日本の国家予算はいまや100兆円規模ですから、国家的課題であれば、そのくらいは出せるはずです。(とはいえ、財源案については後述) なお、北海道福島町や福島県矢祭町など、自治体レベルでは第3子に100万円以上の祝い金を給付しているところは既にいくつか存在します。

 さらに、教育を全部無償にしたらどれくらいかかるか、という試算もしたことがあります。すなわち、学校教育費・給食費以外の、塾代等の平均費用(学校外活動費の平均費用)として、小学生一人につき年額で21万円、中学生一人につき年額28万円を補助したらどうなるか(他に流用されないように教育バウチャーとしての支給が前提)。かかる費用はおよそ2兆5000億円になります。これくらいの予算規模だったら、政府が決断すればできない施策ではありません。

 もしかしたら、お子さんいらっしゃらない世帯やもう子育てが終わった世帯から、「なぜそんなに子どものいる家庭を優先するんだ」と不満が噴出するかもしれませんが、このまま効果的な手を打たなかったら、日本という社会がなくなってしまうかもしれないのです。われわれは、もうそれくらいの危機感を持たなければならない時期に差し掛かっているのです。

 中国やインド、インドネシアは元々日本より人口が多い国として認識されていますが、このままでは我が国はベトナムやフィリピンにも人口では抜かれていくでしょう。中国は人口減少局面に入りつつありますが、その他のアジアの国々は人口ピラミッドも正三角形に近いところが多くあります。日本の人口ピラミッドは死に向かう「棺桶型」(上が少し膨らんでいるが先細り)と揶揄(やゆ)されることもありますが、経済的のみならず社会的にもアジアや世界の国々に埋もれる存在になりかねないのです。

財源は捻出できる

 では財源はどうするか。私には2つ、アイデアがあります。

 1つは「資産課税」です。金融資産を中心に、資産課税をしたらよいと考えています。消費税については税率を上げるのに世論は敏感ですし、逆進性が高いとされます。非裕福層の負担が重くなり不公平だとう意見が強くなるでしょう。

 それが資産課税だったら、資産がある人だけが負担することになります。居住用の不動産まで資産課税の対象にすると、多くの人が重税感を覚えることになるでしょうから、金融資産だけにするのが現実的かもしれません。

 例えば、現在1800兆円ほどある個人金融資産に「未来のため・子どものため」と仮に1%の資産課税を実施したとすれば、それだけで18兆円の税収になります。所得との兼ね合いなどで調整したとしても、10兆円くらいは確保できるでしょう。0.5%でも5兆円です。それだけで、先ほどの出産一時金や学校外教育費の無償化の財源は十分に賄える計算になります。

 もう1つ、検討すべき財源捻出策があると思っています。「コンソル債」です。

 コンソル債とは、元本を償還せず、利子だけを受け取れるという債券です。イギリスでは戦時にかつて発行されたことのある国債ですが、償還されることはないので、設定利率にもよりますが、購入した投資家はほぼ間違いなく儲かりません。では、なぜこれが売れるのかというと、この債券を持っていることが名誉とされるからです。購入者の気持ちにうまく訴求できれば、わずかな利子の支払いしかなくても、購入者が多くあらわれるのです。

 この仕組みを利用し、「この国を救うため」という側面を強調し、投資家に購入を呼び掛けるのです。おそらく趣旨に賛同して購入してくれる富裕層の人々もいると思います。かつてイギリスで発行された際は変動利率でしたが、後年度負担がはっきり分かるように固定利率(しかも低利)でも良いかと思います。極端な場合、「利子」は、感謝状とか、恩賜の記念品とかでも良いかも知れません。無税であるだけで、いわゆるアングラマネーが表に出てくるという説もあります。

 いずれにしても、財源は考えようです。税負担が増える一部の層からは反発が出るかもしれませんが、いま思い切った少子化対策を行わなければ、取り返しのつかないことになります。安倍首相の決断に期待します。