2018年8月、KAGRAクライオスタット内へのサファイア鏡設置作業の様子。(提供:東京大学宇宙線研究所)

 岐阜県神岡鉱山の地下200mの巨大空間に横たわる重力波望遠鏡KAGRA。「KAGRA」という名前は神岡(Kamioka)の頭文字“KA”と、重力波を表す「Gravitational Wave」の“GRA”からとっているが、神様に奉納する音楽である「神楽」の意味をも併せ持つという。天から届く「時空のさざ波」に聞き耳を立てる重力波望遠鏡に、ぴったりの名前だ。

 10月4日、東京大学は重力波望遠鏡KAGRA完成式典をKAGRA坑内で実施。飛騨市神岡町の延喜式内社大津神社神楽社中による神楽が披露された。続いて米国の重力波望遠鏡LIGO、欧州のVirgoと研究協定調印式を行った。KAGRAは国際的な重力波観測ネットワークに参加し、年内に観測を始める予定だ。

【前回の記事】水素原子1つ分の「時空の歪み」を感知せよ!
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57830

なぜ望遠鏡にサファイア?

 KAGRAには他の重力波望遠鏡にはない大きな特徴がある。まず地下にあること、そしてマイナス253℃に冷やした世界最大のサファイア鏡を持つこと。これらは、他の望遠鏡が将来的に導入を検討している先駆的な技術。KAGRAはいち早く高度な技術に挑戦し、取り入れたのである。

 しかし、なぜ望遠鏡にサファイア鏡?

 KAGRAに使われているサファイア鏡は直径22cm、厚さ15cm、重さ23kg。単結晶の人工サファイアを約1年かけて完成。宝石のサファイアは青いが、このサファイアは不純物を取り除き無色透明だ。

KAGRA報道公開で、KAGRA前身の重力波望遠鏡CLIOで使われたサファイア鏡のプロトタイプを手に。材質はKAGRAの鏡と同じ人工サファイアでずっしり重い。透明なので、宝石のサファイアという感じはしない。