最後のUはUpgradeです。これは、いままで表舞台では目立っていませんでしたが、「側近」的な存在として安倍首相を支えてきた人材を、初めて入閣させる人事です。首相補佐官を長く務めてきた河井克之さんを法相に起用し、同じく補佐官だった衛藤晟一さんを一億総活躍担当・領土問題担当大臣にし、さらに官房副長官だった西村康稔さんを経済再生担当大臣に、同じく官房副長官経験者の萩生田光一さんを文部科学大臣にするという具合です。縁の下の力持ち的存在だった側近を、閣僚へと「アップグレード」させているわけです。
Stay、Reuse、Upgradeとそれぞれスタイルは違っても、「安定優先」「安心感重視」という特徴が色濃く出た改造人事だったと思います。
本当は何にでも挑戦しやすいタイミングだが
しかし実は、タイミング的に言えば現在は、安倍内閣にとって、そして、日本の政治史上珍しいくらいに「挑戦」しやすい状況なのです。
というのは、この夏に参議院選挙がありましたから、あと3年間、参院選はありません。衆院選も2017年に実施しているので、安倍首相が国会を解散しない限り、2021年まではありません。さらに安倍首相は、「総裁任期は連続2期まで」としていた自民党の党則を改正し、連続3期を可能にして、現在3期目に突入しています。現在の党則では「連続4選」というのはありえないので、2021年には任期満了。つまり、「総理・総裁もこれで最後。もう選挙も気にしないでいい立場だし、国会では多数を押さえているので、なんでもやっちゃおう」と、かなり自由に、何にでも挑戦できる状況なのです。しかも、安倍一強と言われて久しいですが、安倍官邸は、霞が関にも党内にもライバルらしいライバルがいない状況です。
その状況で、安倍首相も一応は「安定と挑戦」を謳っていますが、閣僚や党幹部の顔ぶれを見てしまうと、「安定感抜群」の人たちばかりで、その「安定」を活用して、いったいどういう挑戦をするのか、さっぱり見えてこないというのが正直な感想です。敢えて言うと、政策というより、「連続4選」に「挑戦」する可能性を巧みに残しているというところでしょうか。
「挑戦色」の演出は小泉進次郎と今井絵理子くらい
もちろん、公式には安倍内閣が「挑戦」しようとしている政策課題として思い当たるものは2つあります。
1つは憲法改正です。
安倍首相は憲法改正に向けて大きく舵を切るという意向を示していますし、大枠ではその方向に向けて動くのだと思いますが、正直、いま一つ気迫を感じられません。安倍さんがお仕えした小泉純一郎首相は、参院で郵政民営化関連法案が否決されたので衆院を解散する(参院は解散できないので)という「滅茶苦茶な気迫」を見せ、本当に解散しましたが、私を含め、安倍さんからそこまでの気迫どころか、その半分の気迫も感じていないのが現況だと思います。