曺氏は権力の旨味に染まっていた

 曺国氏は、もともとソウル大学法学部の教授であった頃から、政治志向があったと言われている。そして実際に青瓦台の民情秘書官という権力の中枢に近い地位を得ると、その地位を思う存分利用するようになった。

 文政権の幹部はもともとその多くが政治闘争をしてきた人々である。政治的、経済的に恵まれていたわけではない。したがって、いったん手にした特権を最大限利用して、蓄財し、権力を強化していこうとの意思の強い人々である。曺国氏も法相候補となったからには何としてもその地位を維持したいと考えたはずである。そのため、スキャンダルが出てきてもその地位を譲る気はなかった。

曺氏は保身に躍起となっている

 ただ、今その地位に固執している理由はむしろ保身ではないだろうか。

 前述のように曺氏をめぐる疑惑は拡大しており、刑事責任さえ問われかねない状況に陥っていた。現に、6日深夜、ソウル中央地検は、東洋大学総長からの表彰状を偽造したとして、妻を召還して調べないまま、時効が迫っている関係上、在宅起訴に踏み切った。

 曺氏にしてみれば、彼や自らの家族に迫りくる検察の捜査と刑事訴追の危機を防ぐためには、大統領や政権によるサポートが欠かせない状況だ。法相指名を辞退し、一人の市民となれば彼やその家族が検察の手にかかりやすくなることは必定である。朴槿恵大統領のそばにいた崔順実氏の悲惨な状況を見るにつけ、政権からは離れたくないと強く決意していることだろう。

 反面、法相に任命されれば、逆に文政権批判の矛先が曺氏に向けられ、いっそう追及が厳しくなることも予想される。

「時すでに遅し」か

 いずれにせよ、曺氏の任命如何に係わらず、文政権にとっては厳しい局面が待ち受けている。スキャンダル発覚直後の、今から2週間ほど前に曺氏が指名を辞退していれば、ここまで事態が深刻になることはなかったと思う。しかし、事ここに至っては、どちらの方向を辿るにせよ、時すでに遅し、である。

 文在寅氏は、聴聞会後の世論調査結果がそれほど悪くなければ、直ちに任命に踏み切るつもりだったのだろう。聴聞会前の世論調査では、任命反対が半数強であったが、文在寅支持層に限れば9割が任命に賛成していたからだ。

 したがって聴聞会後の世論調査結果が極端に悪化したり、デモが激しくなったりしなければ、文氏のこれまでのやり方から見て、任命を強行するのではないか、と私も見ていた。だが、7日に韓国の世論調査会社・韓国リサーチが実施した調査では、曺国氏の長官任命について反対するとの回答は49%で、賛成の37%を上回ったという。こうした世論を前に、文大統領も逡巡せざるを得ないのだろう。

 それでもなお法相に任命するというのであれば、強制捜査を受け、妻が在宅起訴されている人物を要職に就ける韓国という国は本当に大丈夫なのかと、ますます心を痛めてしまう。長年韓国との外交に携わった人間として心配せずにはいられないのだ。

 韓国人に伝えたい。真実を直視すべきである。