8月23日、韓国外交部は、長嶺安政駐韓日本大使を呼び、日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を通告した。これによって、3年にわたって続いてきた日韓の軍事的な協調関係は、通告から3カ月後の11月をもって解消されることとなった。
反日カードで「玉ねぎ男」の醜聞隠し
この通告を受けて、私は青瓦台(韓国大統領府)の事情に精通した韓国の関係者から、詳細に話を聞いた。それによると、「文在寅(ムン・ジェイン)政権は今回、主に3つのことを考慮して決断を下した」という。
それは第一に、「反日を利用して自らの政権のスキャンダルを回避する」ことである。この関係者が証言する。
「文在寅大統領は、『20年続く革新政権』を目指していて、大統領が5年の任期で再任不可のため、自らの後継者を内定した。それが、同郷の年若い友人である曹国(チョ・グク)ソウル大学教授(54歳)だ。
曹教授は、2017年5月に文政権が発足すると、青瓦台の民政首席秘書官に抜擢され、今年7月26日まで務めていた。その後、8月9日に、文在寅大統領が次期法務部長官(法相)に指名した。これは、来年4月に総選挙が控える中、その時までに文大統領と曹長官のコンビで警察・検察改革を断行し、右派の政敵たちのスキャンダルを暴いて、一網打尽にしようという戦略だ。
その上で、総選挙後に曹長官を自らの後継者にして、政権を引き継ぐ。そうすれば文大統領は、派閥を持たない曹長官の黒幕として、引退後も引き続き、政界に君臨することができるというわけだ。
ところが曹教授に、二つのスキャンダルが噴出した。一つは、娘を名門・高麗大学に不正入学させた疑惑で、もう一つは息子の兵役を5度にわたって延期させた疑惑だ。そこで曹教授についたニックネームが『玉ねぎ男』。まるで玉ねぎの皮を剥くように、次々とスキャンダルが噴出するからだ。その様子は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の『崔順実(チェ・スンシル)スキャンダル』を髣髴とさせる。
そこで文在寅政権としては、反日のカードを切ることで、『玉ねぎ男』のスキャンダルを緩和させようとしたのだ。そのため逆説的だが、これから日本が韓国に対してヒステリックに反応すればするほど、反日を利用できることになり、文政権の思うつぼとなる。
ちなみに文大統領と曹長官候補のコンビは、8月29日に突然、朴槿恵大統領と崔順実被告の裁判の判決を出すことを決定した。それは、その前日の28日に、日本政府が韓国の『ホワイト国』適用を始めるからだ。つまり文在寅政権の『反日利用策』は、二段構えになっているのだ」