支離滅裂な文在寅の思考回路

 さらに、第三の理由もあるという。

「それは、八方塞がりの韓国経済をV字回復するため、韓国の輸出の25%を占める中国を振り向かせることだ。2016年に朴槿恵前政権が、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の韓国配備を発表して以降、韓中関係が悪化。翌年、実際に配備したことで、最大の貿易相手国である中国が猛反発し、韓国経済は一直線に下降していった。

 文在寅大統領は、2017年12月に国賓として訪中したが、10回の食事中、8回を『一人メシ』という冷遇を受けた。当時から今年6月の大阪G20(主要国・地域)サミットでの韓中首脳会談まで、習近平主席は一貫して、『THAADを一刻も早く韓国から撤去すべきだ』と強調している。ところが、THAADを韓国に配備したのはアメリカ軍のため、文在寅政権はおいそれと撤去できない。

 そこで、中国を喜ばす代わりの軍事的な産物が必要だったのだ。それが日本とのGSOMIA破棄というわけだ」

 この三番目の理由については、日本が文政権の対中外交のスケープゴートにされたことになる。

「8月22日午後3時から始まった国家安全保障会議(NSC)の常任委員会は、延々3時間近くに及んだ。最後の1時間は、主に文在寅大統領が、反対する鄭景斗(チョン・ギョンド)国防長官を説得する時間だった。日本の航空自衛隊で学び、『アメリカ、日本との3カ国協調こそが、韓国の安全保障の根幹である』と主張し続けた鄭長官は、まもなく辞表を出すのではないか」(同・関係者)

 NSCの金有根(キム・ユグン)事務処長は、8月22日に開いた記者会見で、7月に日本が安全保障上の理由で、輸出管理を簡略化する優遇対象国から韓国を除外する決定をしたことによって、日本との安全保障上の信頼関係が持てなくなったことが、GSOMIAを破棄する原因だと説明した。だが、この関係者の証言によれば、「3つの理由」のすべてが、日本とは直接関係ないことになる。

 いったいどうなっているのか? 日本としては、徹底的な「文在寅政権分析」が必要である。